感想置き場

いろいろと感想を残します

アークナイツをはじめました

ゲームについて

アークナイツ(明日方舟)は、中国のゲーム会社Hypergryphが開発運営しているソシャゲで、ジャンルはタワーディフェンス。中国本土版が先行して配信されており、日本版(グローバル版)は半年くらい遅れて配信されており、そちらの配信はYosterが行っています。(Yosterは開発はしていません)

アークナイツ

アークナイツ

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きっかけ

名前自体は前からなんとな〜く聞いたことがあったものの、特に強く始めたくなるようなきっかけがなかったためやったことがありませんでした。pixivかtwitterの海を漂っている時に、確か好きな絵師さんのイラストになんか好みのイケメンおるな....誰やろ...と思って調べたら、アークナイツと出てきて、そのときなるほどねーあれか!と思ったくらいだったのですが、人間一度意識すると気になってしまうもので、他にもいろんな絵が流れてきた時にこれもアークナイツなのかーとだんだん興味を持つようになりました。で、よし!と思い立ったきっかけははっきりとはないのですが、この一目惚れしたキャラゲーム内で会えたらイイなーと思って、いろいろおすすめ記事読んでみたら、シナリオとかガチャのスタイルも割と合いそうだったので、あとそのキャラがまだ始めてもいないけどめちゃ好みだろうという確信がついたので、続くかわからんけど始めるだけ始めてみよう!と思って入れてみた次第です。

ちなみにきっかけになったキャラクターは重岳です。夏頃に多分復刻されるみたいなので、それまで頑張る予定。

感想

ただいま2-7です。上級術師...硬くない?今後章をクリアするかキリのいいところで忘れないようにその都度感想記事をあげていければなと思ってます。キリ悪いですが...ここでは今の所の雑感を。

全体(ストーリー)

病気が蔓延して天災まであり、移動都市で...といった、暗めSFっぽい設定に惹かれて初めましたが、噂に違わずの雰囲気で辛くも楽しい。生きるのが厳しい世界なだけに、心にくる台詞も多いです。

あと過去イベをたくさん置いてくれているのがとてもありがたいなと思ったと同時に、量多いなってなりました(褒めてる)。物量で攻めてくる...

戦闘

タワーディフェンスってほぼやったことがなくて(十三機兵くらい)楽しめるかなーと思っていましたが、今のところなかなか楽しめております。

星3クリアを初めは意識していなかったのですが(そこにこだわると多分自分の性格上完璧主義が発動してめんどくさくてモチベが続かないだろうなと思ったため、意図的に無視するようにしていた)星3クリアしないと初回特典の石がもらえないことに2章くらいに気づき、まあじゃあストレスにならないくらいの範囲で頑張ってみようかな、とやってみたところ。戦略性の高さに気づき、だんだんそこに面白味を見出しているところです。当たり前ですけど適当に置いてるとダメで、盾で防いで術でまとめて、ってのも、ブロックできる人数にも限界があるから、ルート上に遠距離の子をおいといてHP削っておいたり遅延させておけば通り抜けられる前に倒せる(置く位置もなるべくたくさんのマスをカバーしてかつ敵の射程から遠いところにすると敵の移動の過程で減らせる体力が増える、ただし置く順番で狙われるのも変わるのでそこも考慮する)とか...一度置いたら終わりではなく、タイミングを見計らって撤退させて帰ってきたコストで盾役を差し込むとか、リアルタイム性もあり、ぼけーとやってると結構きつくてびっくりしました。それぞれの役割や敵のふるまいもきちんと説明文読んで理解して進めないと、普通に死ぬバランスがいいですね!理解してないと進めないバランスは自分が精神的肉体的に疲れているとキツイですが、個人的にはオフゲでもそういう、自力で調査して勉強して考えて進めるバランスは結構好きで、自分で考えてやった結果進められるとやっぱり達成感がありますね。(昔、EoEにめっちゃハマったとき思い出しました。あのゲーム、戦闘の仕組みがかなりとっつきづらく、理解しようと情報を集め自力でコツとかメモに書いてたな...)

ただ、そんなに高尚な頭でもないためやはり初回星3クリアはすんなりとはいかず、攻略さんにはお世話になっております。一回突撃してみて、初っ端からきつかったら、完全トレースではなく、序盤の置き方とかを参考にさせてもらって、もうにっちもさっちもいかなくなったら答え合わせ、行けそうなら自力で考えてみる、みたいなスタイルでいってます。完全自力で考えて星3クリアできたときは嬉しい!初めの頃はもうわからん!とほぼトレースしてましたが、攻略さんが、そこに置く理由とかを書いてくれているので、そこから色々学んで、だんだんと答えを見る割合が減っていっており、成長を感じられてイイ。なんか演習問題解いてるみたいだな...

このゲーム、調べたとき、ソシャゲしないけどコンシューマのゲームはするゲーマーの人に結構好かれている印象だったのですが、この、ゲーム性が結構それなりに歯応えがあるという特徴がポイントな気がしますね。私も見事にこのルートを辿っている気がする。

翻訳

ちょっとだけ硬いなーと感じる時もなくはないですが、全然問題なく、物語への没入感を阻害するようなものは今の所感じられていないです。誤字脱字がちょいちょいあり、そこはふふってなっちゃうこと多し。

音楽

アプリをインストールしてる間の曲がまずカッコよくてええやん!ってなった。オケで壮大な感じというよりかは電子音でクールな感じで、こういうジャンルの曲がもともと好きなので幸せですし、世界観とも合ってて最高。

あとなんか、ゲーム中には一切流れない曲(キャラのテーマ曲みたいな)をタダでたくさん配信しているらしく、youtubeで試しに聞いてみたら↓

youtu.beこの曲がめちゃかっこよくてびっくりしました。曲として普通に好き。このキャラクターについてはまだあまり知らないので、よりゲームを進めたあと歌詞をもう一度聞いてみたいですね。

あと、作中世界のレーベル会社のwebサイトという体で、下記のサイトも公開されており、ゲームOSTなどがただで聞けます。太っ腹~。あとサイトかっこよ。歌詞まで見れる。凝ってるなあ

monster-siren.hypergryph.com

いろんな人が好き曲を語っているので聞いていきたいな。

note.com

note.comwww.inside-games.jpnews.denfaminicogamer.jp

アート

最近のゲームはみんな絵が綺麗だねえ(突然の老人)着せ替えショップの絵とか皆綺麗ですごいです。オーキッドお姉様の服ほしいな…

初めはメインのゲーム画面(ディフェンスしてるとき)はデフォルメキャラか〜ってなりましたが、慣れてくるとかわいくなってきました。配置した時の動きとかも結構違って細かい。

ただいまのキャラ状況

初心者スタートダッシュを10連だけして、登臨意までは石を貯め配布で粘ろうとしております(果たして貯められるか見もの)。

10連でソーンズくんが来てくれたのでとりあえず育てているのと、交換券でスペクターちゃんとサイレンスちゃんをもらいました。サイレンスちゃんは羽の見た目がとても可愛かったのと、まだ使えてませんが医療ドローンが便利そうだったので。スペクターちゃんは、ラップランドちゃんと悩んで、キャラ的に気になる方にしました。攻撃音が見た目から考えられるものと違いすぎて笑っちゃった。クオーラちゃん(固くなることしかできないのなんて言わないで...君は生きているだけでえらい...)にもお世話になっています。配布の子たちにもめちゃめちゃ助けられている!

殲滅のために他の方からお借りしたエフイーターちゃんがめちゃ可愛いのになんかセリフが武の人っぽくて(曲のなかに直を求め、剛の中に柔を見出す!)気になり、調べたらカンフー女優って設定にめちゃめちゃ惹かれてしまったので、欲しい...初めて早々に第二の目標ができてしまった笑

このエフイーターちゃんの設定やセリフ、重岳の戦闘時のセリフとか(借りたところしか聞いたことないけど。征蓬未だ定まらず、甲冑我が身にあり。とか)、こういい意味で中国ならではという感じがして(翻訳が硬いとかではなく、そもそものセリフ内容が)、好きです。漢文の引用とか日本ゲームだとないし、中国の武の達人キャラはやっぱり国産ゲームにはない味がする気がします。外国ゲームはこういう文化の違いが感じられるのも楽しいですよね。

参考にさせていただいているサイトさんたち

事前情報からプレイ中の情報まで、このゲームは結構とっつきづらさというかすぐには理解しづらい項目がたくさんあるので、ネットの記事に大変お世話になりました。

おすすめしてくれた記事

やろうかなー(チラッチラッ)と思っておすすめや紹介をしてくれている記事を探していた時に出会った記事たち。みなさま愛が溢れていていいですよね。個人的にみんなが推してる点で一番やろうかなーと思えたポイントは、ゲーム部分がそれなりに頭を使う必要がある、というところでした。やはりオフゲ脳...

note.com

note.comnote.comautomaton-media.com

ただ、はじめた直接的なきっかけはこの記事かもしれない…やっぱり他人が推しに狂ってるのを見るのが一番効きますね。

note.com

初心者入門のための情報

Wikiがとっても充実しています。ありがたい…

arknights.wikiru.jp

arknights.wikiru.jp

基地が最初マジ意味不明だったので助かった…

arknights.wikiru.jp

ydoon.hatenablog.com

note.com

・過去イベのシナリオがたくさんあるのに読む順番やタイミングが全くわからなかった私に救いの手を差し伸べてくれた記事

note.com

攻略情報

arknights-kouryaku.comシンプルに、画像で一手順ごとに、置く理由も書きつつ解説してくださっており非常に助かっています。

世界は「関係」で出来ている:美しくも過激な量子論を読みました

本について

イタリアの著名な理論物理学者であるカルロ・ロヴェッリによって書かれた、量子力学についての歴史とかその考え方、捉え方について書かれた本です。原題は「Helgoland」。

 

きっかけ

本屋で見かけて、親にこれは昔読んだ。おすすめ、と言われたので、借りて読みました。量子力学には大学時代に井戸型ポテンシャルの波動方程式を解くくらいまではやりましたが正直考え方についてはほぼ理解できなかったのと、この前Outer Wildsをプレイして、量子のふるまいに興味もあったので、どんなもんじゃいと思って読んでみました。

感想

全体通しての結論は、日本語版タイトルにあるように、この世の中のものはすべて相対的、あるものとあるものの関係性でできており、そのもの一つで定義できるものは一つもないのだ、ということなのかな、と思いました。

 

以下、トピック別に記載。

科学的な思考について

作中で、科学的な思考について語られる箇所がいくつかあります。

科学的な思考は、すでに得られた確かなものでできているわけではない。それは、絶えず動き続ける思索なのであって、その強みはまさに、あらゆるものを絶えず疑い、論じ直すという点にある。この世界の秩序を大胆に覆し、より有効な秩序を探って、そこから更にあらゆるものを疑い、再度全てをひっくり返す。ためらうことなくこの世界について考え直すこと、それが科学の力なのだ。

なにか新しいことを学んだら、即座に自分たちの偏狭な形而上学的視野を変えなくてはならない。この世界に関して新たに知った事柄を、真剣に受け止める必要があるのだ。たとえそれが、現実の構成に関する自分たちの思い込みと衝突したとしても。思うにこれこそが、持っている知識に驕ることなく、自身の学力と道理を信じる姿勢なのだろう。科学は、真理の宝庫ではない。科学の根っこには、真理の宝庫など存在しないという意識がある。何かを知るための最善の方法、それは、この世界を理解しようと努めながら世界と相互に作用して、自分たちが出会うもの、見つけたものに合わせて己の精神的な枠組みを調整し続けることだ。

何かを理解しようとするときに確かさを求めるのは、人間が犯す最大の過ちの一つだ、と作者はいう。知の探求を育むのは確かさではなく、根源的な確かさの不在なのである。自分たちが無知であることを鋭く意識するからこそ、疑いに心を開いて学び続け、よりよく学ぶことができる。

この、「あらゆるものについて思い込み、前提を廃し、疑い」「とにかく外界を柔軟に、素直に受け入れ」「なにかに落ち着くことなく、精神や考え方を更新し続ける」という姿勢は、以前「幸せになる勇気」で読んだ、哲学の話とおんなじだなと思いました。「幸せになる勇気」では

哲学の語源であるギリシア語は、知を愛するという意味を持つ。すなわち、哲学とは愛知学であり、哲学者とは愛知者なのである。…哲学は学問というより、生きる「態度」なのです。…私はいつまでも自分を考え、他社を考え、世界を考え続けます。ゆえに私は、永遠に「知らない」のです。

というふうに、哲学について哲人は語っています。これと全く一緒だな~と。この本、物理の本といいながら、半分くらい哲学の本って感じなんですけど、こういうところで生きる姿勢が同じだから、物理も哲学もこの作者にとっては地続きなものなんだろうな、と感じましたし、実際に読んでいても物理と哲学の親和性は高いというか根っこは同じなんだなと思いました。ただ、私からしたら物理学者は工学とかと比べて、実用ではなく理論というか哲学寄りの人だよなと感じるのですが、この作者自身は、自分は作中に自身が引用しているような偉大な哲学者ではなく卑しい物理学者である…みたいなことをいうところがあって、意外でした。まあ確かに、物理も"道具"感は哲学と比べるとまだちょっとあるっちゃあるかな…?

この哲学的な姿勢は、「幸せになる勇気」を読んでから私が大事にしたいなと思っているものなので、偉大な理論物理学者である作者も同じ考え方をしているのがなんだか嬉しかったし身近に感じられて良かったです。

あと、こういう"無知の知"的トピックで好きなのが、これです。

「私たちが、重力ポテンシャルの深い井戸のそこで、九千万マイル以上離れた核の火の玉の周りを回る、気体に覆われた惑星の表面で暮らしているという事実。そしてそのことを普通だと考えていることを考えれば、自分達の視野がどれほど歪みがちなのかは歴然としている」 (作中で、イギリスの作家ダグラス・アダムズによる発言、と引用されている)

今生きているこの状況を、普通だと思っているのが普通じゃない、という視点をもって生きるのは楽しいですよね。私がSF映画を見るのが好きな理由の一つに、自分と全く違う常識、生態を持つ異世界において、そこに生きる者たちがそれを当たり前に受け入れている様子や私達と異なる日常をみるのが好き(例えば指が10本ないから10進数じゃないとか、猛毒の気体の中で生きているとか、太陽が2つある、とか)というのがあるのですが…この、フィクションを見ている時の興奮、そして自分たちの状況の異常性を、日常でも自覚していきたいな~と思いました。

存在の相対性について

この本で語られる、個人的には最も大きいと思われるトピック。作中の、これについての印象的な箇所を以下にいくつか。

ある対象物が「存在する」、とは、その対象物が他の何かと相互作用することであり、その相互作用のありようそのものである。すなわち、そのもの単独で存在が定義されるものは存在せず、この世の中のありとあらゆるものすべてが相互作用し合っており、その互いに作用し合う存在の広大な網目が現実世界なのである。もちろん、我々もその網目の結び目の一つであり、けして傍観者などではなく、俯瞰的な視点で物事を観察することなどできない。絶対にどんなものであっても、その存在は網目の一つであり、「外側」は存在し得ないのである。

例えば、地球は球だから、上と下は絶対的な概念ではなく、地球のどこにいるかによって変わる相対的な属性である。速度も、ある対象が別の対象に対して示す属性で、私が動いているとき、地面に対してと、太陽に対しては違う速度で歩いていることになる。つまり、2つの対象物の間だけで成り立つ関係=属性である。石には位置はなく、なにかとぶつかったときにだけ、その相手に対して位置がある。空自体はいかなる色も持たないが、空を見上げた私の目に対しては色を持つ。このように、物体は孤立した明確な自分自身の属性を持っているわけではなく、他との関係において、更にそれが相互作用したときに限って属性や特徴をもつのである。

すなわち、属性は対象物のうちにあるのではなく、対象物と対象物の間に掛かる橋で、対象物は他の対象物との関係においてのみその属性を有する。この世界は、互いが互いの反射としてしか存在しない、鏡の戯れなのである。

つまり、あらゆるものは関係という観点でしか捉えられず、考えられない。

なんとなく日々、"人間は"、相対値でしか物事を知覚できないよな、と思うことが個人的にもこれまでちょこちょこありましたが、この本では、もう"この世の全体が"、相対、関係でしか取り扱えず、考えられないというところまでいっており、初めはびっくりしました。でも考えてみれば、確かに、独立して、何とも関係を持たず、その在り方を決められるようなものはないのかも。ただそれが、冒頭のシュレディンガーの猫の解釈の仕方とか、二重スリット実験みたいなやつの解釈の仕方とか、そこに直接はまだ繋げられるほど理解はできてないです...悔しいッ

また、この考え方の根幹にもつながるとして、途中でナーガルージュナの名前とその理論がでてきます。読んでいる間は勉強不足で知らなかったのですが、この感想を書くために、そういえば似たような話がなんかあったような、と思って、この本を取り出したところ、思い切り書いてあって、しかも大乗仏教の始祖だと知り(世界は関係でできている、には多分そこは直接書いていなくて、空の理論の話が主だった)、量子力学から仏教の般若心経、色即是空の話に繋がるとはなかなか面白いなぁ〜と思うと同時に、そのつながりの違和感のなさに驚きました。

(この史上最強の哲学入門には空の理論がより身近に分かりやすく書いてあり、理解が深まりました)

 

この世界は独立した実態にわかれているわけではなく、私達が、自分たちの都合でさまざまな対象物に分けているだけである。山脈は個々の山に分かれているわけではなく、私達が、何らかの意味で分かれていると感じた部分に分けているだけ。私達の行うものの行為の多くが、関係を基盤としたものだ。母親は子供がいるから母親で、惑星は厚生の周りを回るから惑星、空間の中の位置はなにか別のものとの関係によってのみ定まる。時間すら、一組の関係として存在している(過去と未来という相対的なふうにしか定義できない) 

物事の認知の仕方、名付け方って、人間の価値観が出るよな(言語によって分け方が違ったりする。例えば日本語で復讐という一言ですまされる概念は、英語ではその意味づけで複数の単語に別れていたりするし、侘び寂びみたいな、その言語にしかない概念があったりする)と思うことは多々あり、その延長としてこの理論はすんなり理解することができました。この考え方面白くて好きなんですよね。普段何にも考えず名前をつけて認識しているものについて改めてその定義や何を持ってそう言っているのかとか、言葉の根源みたいなのを考えていくと、究極は昔々の人々の考えに行き着く気がして、そこに思いを馳せるのが好きです。当時の人はこれにそう名付ける価値があるから、必要があるから名前をつけたんだろうな、っていう。

ナーガルージュナによると、究極の実体や本質は存在せず、空である。他のものと無関係にそれ自体で存在するものはない。何ものもそれ自体では存在せず、あらゆるものは別のなにかに依存する形で、別の何かとの関係においてのみ存在する。事物は、ほかのもののおかげで、他のものの働きとして、ほかのもののとの関係で、他のものの視点から、存在する。この世には絶対的な存在はなく、相互依存と偶発的な出来事の世界である。

自分が自立的な実体として存在しているのではないという悟りは、自身を愛着や苦しみから解き放つ助けとなる。人生は永久に続かず、いかなる絶対も存在しないからこそ、意味があり、貴重なのだ。ナーガルージュナは人としての私に、この世界なのどかで軽く、光り輝く美しいものだと教えてくれる。わたしたちは、イメージのイメージでしかない。自分たちを含む現実は薄く脆いベールでしかなく、その向こうには…なにもないのである。

"空"という概念についての、この本での、"現実は相互作用の網目であり、薄いベールでしかない"、というたとえがすごく分かりやすく、そして芸術的、詩的な表現で、とても好きです。空って思うとなんだか虚無的な思考に陥りがちそうですが、そこに、輝く光がもれるベール、という例えを持ってくることにより、なんだか救われるような、心が軽くなるような気持ちにさせてくれます。この作者さん、学者さんで理論的でありながらも、こういう詩的な言い回しがすごくうまくて、感銘を受けます。

あとこれは完全に偏見ですが、西洋の人、東洋の学問に驚きがち、とちょっと思いました(いい意味で)。なんかこう、西洋哲学は歴史として当たり前のように前提知識になっているが、東洋哲学は秘められし知られざるものみたいな感じで扱われているような感じがなんとなくしました。でもお互いに、住んでいるところのあたりの考えにデフォルトがセットされるのは当たり前で仕方ないし、そもそも地理的に、互いに独自に発展してきたものであり、西洋哲学と東洋哲学が混じることができるようになったのも、地理を関係なく知識を入れられるようになってきた最近だと思うので、逆に西洋の人がこうやって外の視点から東洋哲学を取り上げてくれることで、私たちも改めてその考えに触れる機会を作ってくれるのは良いなと思いました。

あと完全に個人的なところで、"存在は、作用(デュナミス)なくして成立し得ない"っていう話が出てきて、デュナミスだ!!(FF14脳)ってなった。笑

組織化

ボグダーノフの組織化という概念が結構面白かったです。

社会生活は集団としての労働の組織化であり、知識は、経験と概念の組織化である。科学的な知識とは集団的に組織化された経験なのだ。

"知識"を分解して考えたことがなかったので、経験がまずあり、それを何かしらの観点で体系化、概念化して理解したものが知識なのだという説明はすごくすっきりしていて、驚くとともに納得しました。確かに、知識の根源には絶対に経験があるし、それを、ばらばらの経験として貯めておくのでは経験のままで、そこから概念を抽出することで知識になりうるな、と。何かを考えるとき、ぼんやりと捉えがちですが、こうやって、いろいろな捉え方で、その観点で構成要素を分解してみると、新たな側面みたいなのが見えてきて良いですね。

因果関係

ある構造がなぜ存在するのかを理解するには、その構造の効果と存在の因果関係を逆転させればよい。機能は、それらの構造の目的ではなく、それらの構造が存在するからこそ、生命体が生き延びられる。

なんでこんな奴が生きてるんだ、じゃなくて、こんな奴だから生きているんだ、ということですね。なんか、嫌われる勇気で、目的論の話をしているときを思い出しました。

この本では、"引きこもりは何か原因があって引きこもっているのではなく、目的があって引きこもっているのだ"とか、"人間が怒るのは、怒ることをされたからではなく、怒りたいという目的があるから怒っているのだ"みたいな、原因と目的を逆に捉える話が出てきます。なんかこれにちょっと似てるなーと思いました。普通考える順序とは逆に考えることによって、その理屈が理解できる、みたいな。

「意味」の最も原始的な意味

"意味"について、考察する箇所がありましたが、そこがとても興味深かったです。いろんなことの意義や意味について日々考えることがありますが、意味の意味についてはなかなか考えたことなかったなぁ〜と(意味がゲシュタルト崩壊してきた)。今はかなり幅広い概念をカバーしてしまっている"意味"というものの、原始的な、根源的な意味(別の単語を使いたいが、逃れられない笑)を、生物、物理的に、生存という生き物として不可欠な観点から考えることで確定していくプロセスが面白かったし、とても納得できました。

意味は、妥当な相対情報である。例えば、バクテニアには、餌となるブドウ糖の濃度勾配を探知できる細胞膜と、泳ぐのに使える鞭毛と、最もブドウ糖が多い方向を示す生化学的なメカニズムがある。細胞膜の生化学プロセスによって、ブドウ糖の分布とバクテリアの内部の生化学的状態の相関が決まり、そこからバクテリアが泳ぐ方向が決まる。この相関には、意義がある。この相関が崩れると、バクテリアは死んでしまう。生存上の価値がある物理的相関が、バクテリアには存在する。それが、バクテリアにとって、糖の濃度に関する情報は、意味があるという状態である。もっと身近な例で言えば、たとえば私に頭上から岩が落ちてくるとき、避けなければ死んでしまうので、人間の網膜に映る情報は、外界の情報を取得しており、そこには相関が存在する。すなわち、岩の状態と自分の脳のニューロンを結ぶ内と外には相関がある。わたしたちにとって、視界に映る情報は、意味があるという状態である。

そう考えると、世の中本当に全部相関でできているというか、私たちが認識して考えてる事柄って相関ばかりなんだなと思いました。何かを絶対値で捉えることってできないんじゃないかな。

あと、ここのあたりで一個ギョッとなったのがこれ。

脳は、外界の情報を取得するとき、目から脳にではなく、逆に目から脳に信号を送っている。脳は、すでに知っていることや以前起きたことに基づいて、見えそうなものを予測し、目に映るはずのものを予測してその像を作り、その情報が脳から目に送られる。そして、脳が予見したものと目に届いている光に違いがあると、その場合に限って、ニューロンの回路が脳に向けて信号を送る。脳の予測と違っていたものだけが脳に知らされる。わたしたちは、外界を再構成した像を見ているのではなく、自分が予期し、把握した情報に基づいて修正を施した像を見ているのだ。

映像圧縮技術みたいなこと(前フレームとの差分しか記録しない)常日頃からしてるんだって思ったし、えっ、現実見てないってこと?って思って怖かったです(今も怖い)。しかしまあ、この本はこういう直感に反する現実をいろいろと突きつけてくれて、本当人間ってほとんど思い込みで生きてるんだな〜ってつくづく思いました。

まとめ

量子力学の本かと思いきや、半分くらいは哲学の本でした。世界のあり方とその考え方について、量子力学と、ロシアの革命期の話と、仏教の教えを交えて理解することができ、物理学の話と哲学の話の親和性に驚き、そして楽しく、興味深く読むことができました。正直特にロシアのあたりは半分も理解できてる気はしませんが笑

また、現在も科学は発展途上であり、まだまだ分からないことがある、ということが分かり、なんだか不思議な気持ちになりました。高校の物理とかで学ぶことって、もう人によって正解がわかりました、みたいなノリで捉えていたので、そもそもその根幹からしてまだまだ分からんところが今もあるんだよというのには驚き、そして、自分もまた歴史の一部なんだなという気持ちになりました。未来にはもっと量子力学の話が解明されて、物理定数とかも変わってるかもなぁ。物理という学問自体、どうなってるのかな〜。

読んでよかった!著者、翻訳者さん、お薦めしてくれた親に感謝!

ファミレスを享受せよをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2023年に発売された(元となるitch.io版は2022年のようです)、おいし水さんによるファミレスを舞台にしたアドベンチャーゲーム。なんとドリンクバーもあります。

store.steampowered.com

きっかけ

どこで見かけたか忘れてしまったのですが、タイトルが印象的でずっと覚えてて、いつかやってみたいなーと思っていました。セールで買って、ふと思い立ってプレイ。

感想

全体(ストーリー)

約2時間でクリア。なんとも不思議な読後感でした。分かりやすく爽やかな感じでも、めちゃくちゃ感動的な感じでもなく...表現が難しいのですが、じんわり、ほんのりと暖かさが心に残る感じだったかなと思います。

プレイをはじめる前は、独特のタイトルや、ストアページ初めにある説明のセリフ回しと説明のなさ(なあ君、ファミレスを享受せよ。 月は満ちに満ちているし ドリンクバーだってあるんだ。)から、全編ずっと詩的な言い回しで具体的にわからない感じで話が進む感じなのかなと思っていました。実際に始めてみると、思ったよりもみんなかなり常識的というか、浮世離れしていない...いや、ある種浮世離れはしているのですが、何を言っているのか汲み取れないみたいな掴みどころのない会話ではなく、しっかりと会話している感がある感じで、勝手に安心しました。笑

しかし、分かりやすいからといってその詩的なセンスが損なわれているわけではまったくなく、いいなあと思うセリフがたくさんありました。このゲームをこのゲームたらしめている要素として、セリフ回しはかなりを占めていると思います。ドリンクバーのドリンクの名前も独特ながら焦がれるような魅力があります。私が好きな名前はガラスシロップ。第一のスープの好奇心くすぐられる感じも捨て難いですね。

もう一つ特徴的だなと思ったのが、ゆるい空気。万単位の時間が過ぎているのに焦りとかゼロなのがいいですね。そういう精神錯乱のフェーズはガラスパンさんが過去に乗り越えたってのもありますが。

一個だけ、どの話題を選んでいるのかっていう枠が見づらかったのと、もう一回した話題にはマークとかつけてくれたらUIがもうちょっと便利だったかな~と思いました。

ちょっとトピック別に。

・16桁総当たり

まさかマジで総当たりするとは...ゲームなんだから、何かしら手がかりはあるだろう。えっ、マジでない感じ...?って悟る流れが上手くできてるな〜と思いました。総当たりこそが適切な方法なのかも、というセロニカのセリフには妙に説得力を感じたな。あのシーン、見返したら約6分もありました。曲も相まってああーー終わらねーーー感を非常によく実感できましたね。合間合間にみんながちょこっと話しかけてくるのもイイ。ついに開いた時、ついに開いたことにも、何十万年も経ってることにも、みんなのリアクションが大してデカくないこととか、おかえりーって迎えてくれるところに、このゲームの空気感を感じます。死ぬほど時間経ってるのに悲壮感がないところが。このエピソードで一番ヤバみを感じたのは主人公(ラーゼ)かな。16桁の総当たりをやり遂げた時点でまともではないかもしれませんねってセロニカも言うし。

 

・間違い探し

最後のページで嫌な汗かきましたよね。ああ、間違いって、何が違うのかというの認識を同じくするものの間でしか成り立たないんだなっていうのを思い知らされて、間違い探しというものを使って明示的に説明せずとも間接的にそれを感じさせるストーリーテリングが上手いな〜と思いました。この世のものってあらかじめ分けられているものなんてなくて、人間が勝手に分けてるだけですからね。その基準は人間だけのものです...

音楽

メインテーマ的な"過去を照らす月"のフレーズは妙に頭に残ります。切ないんだか、寂しいんだか、なんともまた一口では言い表せない雰囲気が...あと、フライ・ミー・トゥー・ザ・レストランも好きです。音色がシンプルなところも、この作品の雰囲気構成に一役買っている感じがしますね。

あと、効果音も好きです。話題を選んだ時とかのなんかあの…ファミレスっぽい…ガラスのカトラリーみたいな音。気持ちいいです。

アート

色はほぼ黄色と青だけ、線はドットで描かれているアートスタイルは独特な空気感を醸し出しており、温かくもなく冷たくもない、ただひたすら時間が流れていく感じをより際立たせてくれていると感じます。

あと、画面が真四角なのが特徴的で、人間の視野ってたぶん集中してクリアに見えている部分ってほぼ中央しかなくて、左右はなんとなくしか見えてないので、横長でないからといってあまり窮屈さは感じず、むしろ没入感すらありました。

キャラ雑感

セロニカ

かわいい

話が分かるタイプの人だってめちゃくちゃ安心したし、絵画の裏になんかないのか探ってみたりとかそういう私が思いつくようなアプローチはすでに色々試していて、自分の感覚に近い人だなってなりました。あと、本が読みたい、ランダムに生成された文字列の本じゃなくて、っていう発想とかがなんかすごく、なんかSFとかADV好きそうっていうか、う~んなんていえばいいんでしょう、ランダムに生成された文字列という発想が出てくるのがなんかフィクション好きそうだなって妙に感じました。ただ、首を刺そうとしたのはちょっとビビりました笑。でも異常な状況では正気と狂気は逆転する、というセリフには妙に納得させられました。

アンニュイな顔とつかず離れずの空気感が好きです。ただ、ツェネズはちょっと怖がっていて、何かを追求されているというか、責められているように感じる、優秀な人がもっている残酷さみたいなのを感じます、と話します。私はあんまりこれはセロニカには感じませんでしたが、ツェネズの言っていることはなんとなくわかりまして、気の毒な気持ちになりました。ただ自分が勝手に劣等感を感じているだけなんですけど、そういう人といるとみじめになってくるというか…

主人公が総当たりやってるときに、TRPGつくったんです、途中参加もできるようにしているので、よかったらどうぞ、って言ってくれるのが優しい…ってなりました。まじめな子ですよね。だからこそ処刑人に選ばれたんだと思いますが、それが身を追い詰めてしまったという気の毒な人…。最後END2でも、月の法について提案が、と発言するやいなや、ほかの人たちの返答を待たずに「公私混同かな…」って言っちゃうところよ。でも、それに対して、ほかの人たちが「理想も目的もなしに処刑人を続けるのは難しい」「意思を示し、勝利を勝ち取るのです」と、無条件で賛成するのではなく、真正面からその意思を受け止めようとする姿勢を示すその誠意ある態度に、良かったな~、セロニカ頑張れ!と爽やかな気持ちになりました。苦労を分かち合える友達がもっと増えたらいいのにな。でも、月の人たちはもう全員知り合いだから関係性が変わることはあまりないだろうし、地球の人たちは定命だからな…さみしいな…

どうでもいいですが、個人的には髪の毛は濃いオレンジ色と勝手にイメージしています。

ガラスパン

"めちゃ"に笑う

不思議な名前だなというのが初めの印象。でも中身は普通のけだるめお姉さんで安心した。ガラスパンさんのラーゼに対するリアクションが好きなんですよね。例えば、ムーンパレスから帰りたい?帰らなければ試験もないんだよ、っていうガラスパンに対して、試験は受けることそのものに意義があるというか...という返事をラーゼはするのですが、これに「まっすぐだ…」「眩しっ…」とか、ラーゼの資格試験が趣味だとわかったときに「こわ……」ってリアクションするのとか。一番最後の新しい友達もできたしね、に対してラーゼがそうだね!!って大きな声で返事した時「うわっ急に声でかっ…」とか。なんか笑っちゃうんですよね、見た目なんか結構おしとやかなお姉さんぽいのにリアクションがめちゃフランクっていうかダウナーっていうか笑

あともう一つ好きなのが、ラテラとの思い出シーン。

「ラテラ、あなたは適当すぎる…」

「でも、それこそあなたに欠けているものなのよ」

「適当でいいでしょ」

「衝撃的かもしれないけど…」

「あなたが一生懸命大事にしている」

「退屈だとか憂鬱って感情にはなんの意味もないんだよ」

私も考え込んで憂鬱になることが多いので、この会話にはなんか救われました。この後の「いいこと言うね…」「君は大統領になるべきだ」「そう、その調子だね」って会話も好きです。

スパイク王

お忍び

初対面では、王の面前にいるのだぞ、ってところから、なんてな、冗談だ、はっはっはっ…ってところであ~好きってなりました。器の大きさと責務への態度と包み込むような優しさと人さじのおちゃめさがもう…王!!って感じでほんと好き。

話すことなくなってきたなあってあたりで、話題がなくなって死んだ男の話をして、そのあと「無理に話す必要はないのだぞ」「誰かと過ごすために話題が必要なわけでもないし 別に誰かと過ごす必要もないのだ」って言ってくれるのが、決して捨て鉢になったりやけくそになっているわけではなく、ただただ、何をしても大丈夫だよ、と、自身の存在を、どんな在り方でも寄り添ってくれていて、嬉しいし優しいなぁと心からしみじみ思いました。一方で、その後に「別に一人で時間を潰す必要はないのだぞ」とも言ってくれて。突き放すわけではなくいつでもそばにいるよとも言ってくれるのがもうホント優しい…

またしてもどうでもいいですが、個人的にはほぼ白だけど薄ーい黄緑がかったグレーみたいな髪色を想像しています。

ツェネズ

想像通りの見た目だった

ずっと部屋にこもっていて怪しげだけど、悪い人ではないんだろうなって感じだった。初めて話しかけたのがこの子だったかなあ~。

計器に対して、「どんなに長くても永遠ではない、終わって終えば過ぎた時間は厚みを失っている」っていうのが、不死だ、ってなんかなりました。ガラスパンは「正確に時間を示すものがないことが唯一の救いだったのに」と、真逆のかなり辛そうな態度をとるので。

変わろうと努力してるのが偉いですよね。やったことないことにチャレンジするのマジで尊敬する。それに、慮ってくれて、責任だけは私がとるよと言ってくれた先輩に、私を尊重してくれてありがとうっていうのがイイですよね。

この子は一眼見た時から完全に脳内でピンク髪でした。

ラーゼ

話題について、ずいぶんずけずけ行くんだねって相手キャラから言われた時、ゲームだからあんまり相手のキャラクターに対して申し訳ないけどあまり人として考えてなくて、キャラクターとしてみてたので、相手のことについて根掘り葉掘り聞こうとするのは普通の会話じゃ確かにないなと思ってなんだかハッとさせられました。確かにめちゃくちゃずけずけいくよな。

最後の最後、ガラスパンとの会話で、セロニカとツェネズについて、元気でいてほしい。ほんとうにそれだけ...っていうのが、なんだか好きです。本当にそうですよね、どんな人も、元気でいてほしい...ただそれだけ...

まとめ

アートと音楽はともに唯一無二の雰囲気を醸し出しており、なんとも言えない、あたたかさと爽やかさが共存した読後感でした。キャラクターたちのつかずはなれずの距離感も心地よかったな。製作者様に感謝!

SIGNALISをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2022年に発売した、ドイツの開発者rose-engineによって9年に渡って作成された、レトロSFディストピアサバイバルホラーゲームです。ゲーム的な要素はかなり初期のバイオに近いと思います(ゾンビ出てくるのとか、謎解きがたくさんあるのとか、荷物持てるのが少ないとか)。ストーリーは、ディストピアな感じはちょっと1984年とかを、レプリカントなどの設定はブレードランナーとかを彷彿とさせられたかも。

store.steampowered.com

きっかけ

恐らくsteamでサイバーパンクタグでおすすめされて、圧倒的に好評だったため、セール時に購入。

感想

全体(ストーリー)

約10時間で記憶エンドにてクリア。隠しエンドはちょっとまだ見れていません。

クリアした時の第一印象は、結局よくわからなかったなっていうのと、よくできていたけど、残念ながら私には合わなかったな~という気持ちでした。いろんな方の考察記事を読んで、ある程度の解釈を持つことはできるようになったのですが、それでもやっぱり、ストーリーの内容について確実に断言できることってあまりなくて、推測が混じるタイプのストーリーだったので、そこが合わなかったかも。なんというか、昔の深夜アニメ感がありますね。いろんな要素がちりばめられ、きっとこうではないかという一説は建てられるものの、断言はできない感じが……直接語られるのではなく、おいてある資料やポスターの情報を自分で拾ってつなげていくことでだんだんと全景が見えてくる、というスタイル自体はとても好きで、むしろレビューにそうあったのでそれ目当てで買ったくらいなのですが、本編のストーリーは、おそらくほとんどが精神世界ということで、拾った情報でも、あんまり信頼できないっていう状態なのが自分にとってはムズムズする状態となってしまったのかもしれないな、と振り返ってみて思います。ストーリーについて、分かる部分と分からない部分のバランスって、作品ごとに違って、好みも千差万別だと思うので、この作品のその部分のバランスが、単純に私の好みと合わなかったってだけで、刺さる方には刺さると思います。

ただ、いろんな方のレビューを見て、こういう意味付けができるのか!っていうのを知ると、考察が楽しいっていう気持ちがちょっとわかる気がしました。例えば、後半から結構肉塊とかでグロテスクな感じになってきますが、この表現が、現実のアリアーネががん細胞に侵されていて、その印象が精神世界に現れているのかも、とか、プレイスタイルによってエンディングが分岐するというのが、勇敢な姿勢を持って進んでこれたエルスターだけがアリアーネに出会う資格があり、それが、選択肢分岐とかじゃなくて、実際のプレイスタイル(敵を倒した数とか、NPCと会話した数とか、プレイ時間など、積極的にかかわろうとしているスタイルだと出会う資格があることになる)と関連しているのでは、と解釈されている方がいて、作者が用意した正解ではないかもしれないですが、正解だったとしてもそうじゃなかったとしても、なるほど~!!って関心しました。そうやって、作者の意図を正確に当てられていないかもしれないけど、それはともかく考察してイイ感じに解釈を樹立することを楽しむタイプの方にはこのゲームはたまらないかもしれないですね。(私は結構正解を知りたいタイプなのかもしれない…と思った)

クリアした時は呆然としていてあんまり実感してなかったんですが、推測は入るものの、振り返ってみると、全体的なストーリーはかなり救いがないですね。私は鬱なストーリーも結構おいしくいただけるタイプなので、最後のエルスターの切なさは結構鬱ながらも滅びの美みたいなのを感じられましたが、やっぱりゲームなのでもう少しカタルシスというか達成感が欲しかったかな~~!これは私の好み!

あとこれは完全に私が悪いのですが、前情報をほぼレビューで済ませてびっくりするのが好きなので、PVをほぼ全く見ずに挑んだら、ゾンビが出てきてあ~~買うの間違えたって後悔しました。笑ホラーは得意じゃないので…いや、ホラー要素が含まれているのは知っていたのですが、ジャンプスケアはありませんってレビューにあったので、こんなに直接的ではないと勝手に思い込んでました。たしかに、ジャンプスケアは無かったです、そこは正しかった。笑でも一度ホラーってこういうもんなんだっていい経験にはなりました。一個面白かったのが、RTA見るのが好きなんですけど、バイオのRTAを一時期見ていて、そこでゾンビが襲ってくるのを近づいて誘発して、その横を素通りするというテクニックがあり、それが今作のプレイ時に活かされまして、進研ゼミで見たやつだ!ってなりました。

人間の慣れという機能はすごいもので、何度も通るエリアは、ゾンビがいてもどうも~って感じでいけるようになったな。ただ、探索時の無音だけはどうしても最後まで慣れず、ず~っとyoutube流してプレイしてました(KERありがとう)。せっかく用意してくれたホラー空間を台無しにするスタイル…申し訳なかったけど、そうでもしないと怖すぎてクリアできなかったと思う…そういう意味では、怖がらせ方はとっても秀逸でした。あと、PS1時代みたいなレトロなグラフィックなのが、怖さにより拍車をかけていた気がする。個人的に、PS1時代のポリゴン世界になんか妙な恐怖感を抱いているので、怖さが加速してました…

弾丸とか回復も有限で、ゾンビも時間たつと復活するし、下手したら詰む!でも荷物少ないから沢山往復しないと!!またあの怖い部屋行くの?!あっ復活した!!体力がないよ!!!もうやだ~~!!っていい意味でそういう気持ちはシンクロできたけど、プレイ体験としてはめちゃめちゃストレスでした。笑

あと、無線を操作するのが楽しかった。周波数をいじって探す感じとか、無線を入れたとたんに今までなかった情報が入ってくるのとか、そういう感覚がすきです。

翻訳

翻訳はとっても自然だったと思います。が、考察勢の方の記事を見ると意外と誤訳があるみたい。

音楽

ま~じ怖かった!!!!!ピアノの繊細なシーンもいくつかあったけど怖すぎて申し訳ないけどあんまり覚えてない!!SEも怖かった!!!てかセーブするときの音、怖すぎん!!!?!??!?!?!!??!!?!?!?(機械に触ったときのギャー!とかセーブ終わったときのドゥン!!…とかセーブしないときの音も)何アレ???許さん!!!!(??)

グラフィック

全体で少しふれましたが、この現代にPS1のようなグラフィックで進めるのはかなり攻めてるな~という印象でしたが、それが独特の怖さを演出している感じがしてよかったと思います。

ポリゴンではないパートはドット絵で描かれるのですが、そこはとっても綺麗でよかったですね。

思わず「美人さ~ん」って何も考えず思ってしまった

休め…………

あと、中国語とドイツが混じったデザインや、プロパガンダポスターは最高でしたね!個人的にそのあたりがもともと好きなので、この部分に関しては純粋にテン上げでした。

常に監視を!

廊下を走るな!

この赤の色づかい!昔の印刷っぽい色数の少なさ!直線的で抽象的なデザイン!たまりませんね~~~

惑星のポスターも好きです。

ハイマート。めちゃくちゃあそこを彷彿とさせる

ロートフロント。地球説が濃厚だそうです。青が綺麗

共産主義国家のディストピア社会主義感は、ドイツ語でかなり表現されていますが、それが中国語によって後押しされ、さらにアジアンなサイバー感を足していてとても良い。独特な雰囲気だと思う。

ところどころ中国語が混じるのが独特のサイバー感みたいのを醸し出してる

日本人だからたまに漢字が読めて嬉しい 英語圏プレイヤーはドイツ語も中国語もピンとこないのかな?

まとめ

個人的には合わなかったところが多かったですが、ゲームとしてはとてもよくできてたので、勉強になったなと思います。自分の好みというか、自分がゲームに何を求めているのかが少しクリアになった気がします。あと、デザインはめちゃ好みだったのでそこはとても楽しませていただきました!はー怖かった…………………………

↓個人的に納得度が一番高くて好きな考察記事。書いてくださる方に感謝…さっぱりわからなくて理解放棄してた状態だったのを救ってくれました。

note.com

正欲(朝井リョウ)を読みました

本について

去年映画化され話題だった、というのを、今年の頭に知りました(情報が遅い)。何物などでも知られる朝井リョウさんの作品です。

きっかけ

本屋で昨年売り上げ一位!などで話題作として取り上げられているのを今年の頭に見かけて知ったのですが、普段読まないジャンルもいうこともあり、その時は特別興味も湧かず、手に取りはしませんでした。その後、機会があり、友人と、読んだことのない本を互いに読んで感想を言おう会というのを企画し、その時この本が話題に出て、ちょうどいいし読んでみよう!となったのがきっかけです。

感想

前情報ほぼなしで読み始めて、面白くて二日で読んでしまいました。本当に色々と考えさせられまくりました。普段フィクションに逃げているので、こんなに身近な問題を考えさせられることはなく、読んでるあいだ、いい意味ですごいもやもやムカムカし、作者に気持ちを見透かされているようでなんか意地悪〜!!悔しい!!って勝手に思ってました。笑寛容と不寛容のパラドクスとか、いろいろ思い出したな。

私が受け取ったメッセージ

初めにもう結論からいくと、この本から私が受け取ったメッセージは、

•想像力を働かせる。
•しかしそれでも、結局は自分は自分の分かる単位でしか分かることはできないことを理解する。この世の中には自分が理解できないこと、自分の想像の及ばないところがあることを自覚する。

•自分が正しいと思っていることが他人にとっては正しくないことがいくらでもあり、そもそも絶対的正しさと言うのは存在しないことを理解する。

•マジョリティだからといって正しいわけでもなく、同じようにマイノリティだからといって正しいわけではない。

•自分が正しくありたいという欲求があることを自覚する。

•さらに言えば、自分ですら自分のことがわからないこともある。例えば、自分の欲求の理由だったり、何を受け入れられて何を受け入れられないのか、とか。

•他人について、その人のことを分かったつもりになることが一番傲慢。対話しないで想像だけで決めつける場合はもちろん、それだけでなく、対話する場合でも、結局その人の脳内を直接覗くことはできず、その人の口から出た言葉を自分で解釈するしか理解する術はないため、真の意味で理解することは不可能である。

•どんな理由があれ、他人に迷惑をかけるのは良くない。苦しみは何かしらの行為を正当化する理由にはならない。

•そのような観点では、価値観の近い人々と小さいグループを作り、閉鎖性と対等性を保ったコミュニティを築くのが、効率的には一番良いかもしれない。

•ただ、だからと言って、初めから価値観の違う人の間で歩み寄るのを諦めてしまうのは、寂しい。人はやはり、それがどんな形であれ、誰かとつながっていたいものである。

•だから、大切なのは、互いに互いを決めつけずに、対話をすること。傷つくこともあるかもしれないけど、何もしなければ、何も変わらない。変えられない。価値観が違うからといって、絶対に分かり合えないことが一生確定してしまうわけではなく、自分も他人も、何事も変わる可能性はある。100点の回答は出ないかもしれないけど、何かが変わるかもしれない。

かな、と感じました。

下記、なんとなく人々のグループを三つに分けて記載。

•寺井家

パパが結構分からずやで上手くいかなかった感じが終始ありましたが、パパに足りなかったのは、まず一つは想像力と、対話する姿勢だと思います。これは終始示唆されていますよね。家族との間でも、仕事の時でも。あと、分からないことがあることを認める勇気。自分が信じているものは別の視点から見た時また違う意味を持つことがあり、常に正しいものは存在しないということを受け入れる勇気がなかったんじゃないかなと思います。佳道のシーンでもありますが、人はみんな不安で、自分が"合っている"側でいることを望む、という話がありますが、パパも不安だったんだと思います。これまでの自分の考え方が全てにおいてはこれまでのように適用できなくなってきた中で、それに対する自分のアイデンティティの不安を、新しいもの、分からないものを理解しようとせず拒絶することで確立しようとしてしまったんじゃないかな。自分が正しいと思っていたこと、自分の価値観の根底、アイデンティティが崩れるのは誰だって怖いですからね。後もうひとつ思ったのは、これは難しいところですが、息子のためを思って、っていう行動が、自分の責任と子供の責任を切り分けられていないところがあるかなと感じました。子供では分からないことや、できないことはたくさんあるので、それを教えてあげるのはよいのですが、それを受け取った後、どう行動するのかは、子供自身の選択であり、責任です。パパは、そこの選択についても、自分の責任であるかのように感じている気がします。前、嫌われる勇気で書いてあった、"相手を水辺に連れて行ったのは私だが、その後で水を飲むかどうかは相手次第である"みたいな話で、そこで相手が水を飲むか飲まないかは相手の責任であり、例えばそこで喉が渇いて死んでしまったとしても、飲まなかったのは相手の責任で、連れて行った自分は連れて行くところまでしか責任はない、という考え方。この話は極論、親が子供に全てを教えて、いつでも援助ができる姿勢を見せている状態で、それでも子供が非行に走ってしまった場合は、子供の行動は子供自身の責任である、ということになります。随分突き放した考え方だと感じるところもありますが、子供を守るということはある種子供自身の行動を制限することであり、程度が過ぎると子供の意思が奪われてしまいます。ただもちろん、0/1ではなく、戦火飛び交う中では流石に子供は勝手に出歩かず大人が子供を守るのが正しいと思います。ただ、これが将来の進路とかになると、話が難しくなってきますよね。子供には辛い思いをして欲しくない、でも子供自身の選択を尊重はしたい。ここの板挟みはなかなか辛いところです。辛い思いをして欲しくない、という感情すら、他人への自分の価値観の押し付けだと言われて仕舞えばそれまでなのですが、それではあまりにもドライすぎるとも思います。パパは、自分の価値観の中に子供の行動を押し込めてしまい、自分のいいと思う行動のみを許すという、子供のためを思ってという皮を被った、自分の価値観の押し付けをしている面はかなりあると思います。でも、子供に辛い思いをして欲しくないという気持ちも、嘘ではなかったと思います。ただ、真の意味で相手を思いやるならば、相手の選択で相手自身が辛い思いをしているとき、それは自分の責任ではない、と、ある種切り離す考え方も必要だったのかもしれないなと思いました。この時必要なのは、自分はいつでも相手を援助できる用意があると意思を示すことなんだと思います。

個人的には結構読んでる時はパパに同情しておりまして、ママは息子のやりたいという気持ちや行動を制限せずやらせてあげていたのはいいと思うんですが、若干無責任感がある感じがしました。あ〜、でも、上に書いた、親と子供の責任の切り分けの話を実践すると、こうなるのかもしれないか.... ただ、youtubeが逃避だっていうパパの意見も一理はあると思うので、ママはいい面だけじゃなくて現実視点も息子に教えてあげたほうがもっと良かったかなぁ。

あと、同僚の越川が作中随一のいいやつだと思います。救い。いや最後救いにはなれなかったんだけど(涙)越川は自分には全く分からないことがあることを認めつつ、それでもわかろうと努力する、作中の中でもかなり理想な態度をしている気がする。よし香とかと違って、分かったつもりになってないし、自分のわからないものを思考停止で切り捨てようとしないし、なんというか救ってあげられる、私ならわかってあげられる、みたいな自分本位な感じがせず、対等な視点で、私もわかりたい、と歩み寄ろうとしている感じがあるかなー。

•大学の人々

八重子は、個人的に一番心を振り回された子でした。一番初めは、境遇から色々と共感するところがありましたが、ダイバーシティフェスのあたりで、なんか気に入らなくなり、勘違いから自分が大也を助けてあげるんだと突っ走っているところでは完全に大也と同じ気持ちになってしまいました。

ただ、最後の最後、大也と言い争うシーンで、ガラッと印象が変わりました。もちろん、八重子にも、私だけが理解してあげられるという優越感はあったかもしれませんが、それだけでは終わらず、八重子は大也から傷つけられても、突き放されてと、それでも分かり合いたい、力になりたいという気持ちは揺らがず、最後まで対話を諦めませんでした。ああ、私も大也と同じように、八重子を決めつけていたんだな、と自覚させられました。大也と違って、八重子視点の話まであって、私は八重子の境遇を彼よりも知っていたにも関わらず、ここまでそう誤解してたんだから、やっぱり他人のことって本当の意味で理解するのは無理で、分かったつもりになって決めつけるのが一番ダメだな、と思わせられました。

また、八重子も大也も、対話がなければ、お互いに変わらず終わっていたんじゃないかなと思います。この対話がなければ、八重子は、よし香みたいに、相手を誤解したまま、自分の理解の範疇の中だけで決めつけて、救ってあげられるという救世主ヅラを続けていただろうし、大也も、一生この根っこは根っこのままで、枝になることはないんだ、根っこが新しく増えることはないんだって価値観のまま生きて行ったんじゃないかなと。だから、相手を傷つけないようにするのは大事で、閉鎖性を保つのはある面で正しいけど、それでは永遠に歩み寄りはできないし、変化は現れない。だから、こうやって(なるべく傷つかない形があるならそれがいいけど、それでも無理ならこうやって傷つけ合いながらも)対話をするのが、大事なんだなと感じました。なので、ここのシーンで、すぐには和解できなかったものの、二人が自分を曝け出して、ちょっとでも分かり合えそうになって、変わったのはすごく良かったなと思うし、救いだなと感じました。だからこそ、最後が悲しくなるんですけど....(泣)こんなの、大也一生人間不信だよ。少しでも八重子が彼の心を癒す助けになれたらいいのになあ。

対話が大事だと考えると、この話に出てくる全員が、本当は対話すれば分かり合えたかもしれなかったんだと思うとやるせないですね。あと、読み終わったあと、個人的によし香はホント無理だわって思ったけど、そうやって決めつけて対話を諦めるのが本当は良くないんだよね...自分で理想を説きつつ、実践できてない現状に気が滅入ります。

あと、大也が、八重子に、自分のことをそういう目で見てました、性欲がありましたって認めていいんだって言ったシーンも個人的には印象的でした。されてた側からそれを言ってあげるのが、優しいなと。八重子はきっと自分で自分のその部分を、異性からのそういう目が嫌だったから、きっと自分一人では認めづらかっただろうし、受け入れづらかったんだろうなと思います。なんとなく嫌悪する気持ちがあるけど、でも生理現象なんだよな。素直に認めるしかない...

あとダイバーシティフェスは、むかつくところと、でもわかるってところが入り混じって、ものすごく心をかき乱されました。マイノリティを都合よく扱っているというのはものすごく感じましたけど、八重子のいう"繋がり"が全て嘘とも思えなくて。一つ印象的だったのは、普段しないダンスをスペードの人たちにやってもらうっていう案に対して、それこそ多様性の否定ではと大也に言われるシーン。私は普段やったことないことをやるのが好きで、新しくキッカケにもなると思うタイプなので普段してないことを要求されることにそんなに抵抗なくその案を読んでいたため、ああ確かに、自分を否定されたみたいな受け取り方もできるしそう考える人もいるよな、と気づかされました。まあただ、これは、アイデアの発信側にも悪意があるパターンとないパターンと、受け取り手にも悪意があるパターンとないパターンもあるし、一概には言えないよなとも思います。

•水フェチの方々

いろんなフェチありますし、この本では出てこないようなもっとすごいのも知っていましたが、無生物対象はなかなかすぐは察せないので作者の思い通りに誘導されましたね。

最後、勘違いで捕まってしまったのには本当にやるせない気持ちになりました。そもそも法律は、人間の作った"道徳観"という考え方のもと、いろんな考え方を持つ多くの人々で成り立つ社会において、誰かが虐げられないように、嫌な思いをしないように、公平になるように、皆が合意しているルールだと思うんですよね。まああとは、効率よく社会を作って動かして行くためのルールとかもありますし、(勤労とか)そもそも"道徳観"自体が正しいのかという話もありますがそこはちょっと置いといて、ここで言いたいのは、"多くの人"と、"人が嫌な思いをしないように"というところがポイントだなと思っていて。まず、人間の行動単位が、友達や家族といったような、考え方や価値観がある程度共通している少人数単位だった場合って、法律はいらないと思うんですよ。別にわざわざ言わなくても、何をされたら嫌だとか困るとかわかるし。そもそも普段、生活している中で法律を意識することってないですよね。でもこれが、どんどん人が増えて行くと、考え方も価値観も違う人が出てくる。だから、法律があるんだと思うんです。器物損壊や万引きが犯罪になるのは、それをすると傷ついたり困ったりする人がいるから。対等性が保たれていない、合意なしに行為が行われているからです。別に物を壊したらいけないわけではなくて、誰にも許可されていない状態で勝手に物を壊すのがダメなのであり、タダで商品をもらうのがダメなのではなく、許可を得ないで盗んでいるのがダメなのです。児童ポルノはについては、そもそも身体的にも人生経験的にも、性的な行為に対し、子供は大人と対等性がありません。だから、児童に対する性的な行為は許されないのだと思います。なので、児童ポルノは、本人がそうと理解していないのに撮ったり襲ったりするのが一番ダメだと思いますが、その画像をただ持っているだけの人でも、そういう行為につながる可能性がある人物だということだったり、そうやって欲しがる人がいるから撮る奴がいるんだという理屈で、罰されます。

法律には、人の認知や意図を含めることは(ほぼ)できません。行為の結果は他人は観測可能ですので、確実に含められますが、その人がどういう認識や意図でそれをやったのかは、各々の脳内でしか真の意味では理解できず、悪意を持ってやったらダメ、善意だったらOK、みたいにわかりやすくすることはできない。(故に裁判があって、情状酌量とかがあるんだと思います)だから、行為で定義するしかない。

ルールは悪意から人を守るために定義するものなのに、ルールには"悪意"を定義に含めることができずに行動しか定義できない。これが今回の悲劇を生んだ一因なのかなと。子供が水着で遊んでる写真自体は、別に家族が撮って持ってるのは全くもって犯罪ではありませんし、その友人が代わりに取ってあげて思い出として持っておくのも犯罪ではありません。でも、それが例えば偶然ネットに広がっちゃって、それをそういう意図でダウンロードした人がいたら、それは傷つけられる人が出てくるから、よくないと思います。でも、本人が全く預かり知らぬところでやるなら、誰にも迷惑かけてないのではと言われると、それはそうなんだよなという気もあります。どんなものでも性的になりうるしならない人もいる、それを全て規制することはできないから、そういうのが存在することを受け入れてそこでどう生きるかを考えるか、という話が作中にありましたが、"考えること""感じること"を規制することはできないんですよね。

悪意を防ぐため、その行動を切り取って犯罪とした結果、結果的にその行動になっているが、含まれている意図が違った場合もまとめて罰されることになり、本来やりたかった、悪意を防ぐという行為ができないパターンがあるということかな。極論、人を殺すことだって、安楽死を本人に頼まれたのなら犯罪にはならないですしね。

行為だけを切り取って、そこに含まれていた意図を、想像力を働かせずに、自分の理解の範疇に押し込めて、無責任に批判する、というのが、作中のポルノ事件に対する、啓喜や、佳道の上司が取っていた行動なのかなと。

ここまで書いて思ったのは、私は、その場にいる(もし撮影対象がいるなら、その中の人も)誰にも迷惑をかけていない=全員が同じ認識でやっているならば、つまり対等性(相手の合意があり、認識が共通している)、閉鎖性(それを見て不快に思う人もいるだろうし、全ての人と認識を合わせることはできないから、認識が違う人からは認知されないようにすることで、この行為に対して共通の意図をもっている人しかいないようにする)が保たれているなら、いいんじゃないかなというふうに思っています。例えばSMクラブとかはそこが保たれていますよね。アイドルのグラビア写真は、そう撮られたいと思っている子もいるし、そうじゃない子もいるので、この条件はいつでもは成立できないと思う。児童ポルノについては上述したように三次元だったら絶対に被写体の子供とは対等性は保てない(その子は性的に撮られているとその当時から理解することはできない)のでこの状態は実現不可能なので、二次元でやるしかないという理論になるのかなー。

あと、佳道と夏月が真似事をするシーンで、みんな正しい側にいるかが不安だったんだ、と気づくシーンが印象的でした。ここまで、ずっと、マジョリティ側というか、西山修やその周辺、また那須沙保里とかについて、理解できない敵、みたいな印象を受け取っていたのですが、ここで、結局根っこは自分も含めて全員一緒だったんだ、と、これまでの対立構造が崩れた感じがして。だから、佳道も、二人だけで完結するのではなく、人々が不安なのは同じなのだから、倒れないために繋がっていこうという気持ちになれたのかなと思いました。その結果がこれだよ。悲しすぎ。

ただ、この本、意外と性善説に寄っているなという気もする。生まれながらにして人を傷つけること、人に迷惑をかけることが純粋に好きな人って出てきてないですよね。水フェチは、生まれながらにして特に理由もなくそういう人間になっちゃってて、自分たちでも意味がわからない異常者だと思うとも言ってるけど、別にその人たちは道徳観とか倫理観がぶっ壊れてるわけでは全くないし、いじめとかいじりとか価値観の押し付けをする人々も、根本は皆不安なんだ、というふうに包み込んでいる気がしていて。生まれながらにして理屈抜きに人を傷つける人が好きな人がもしいたら、という話はこの本の範疇にはないかなという気がしました。

登場人物たちを振り返ってみると、自分の価値観における正義を振り翳すという点では、その価値観は真逆なものの、啓喜とよし香と西村は共通するところがあり、よくない姿として描かれているように感じました。

八重子は、一時はその立場になるものの、対話を経て、変わりつつある、自分の中の正しいが人によっては正しくない、自分は自分のことしか分かることができないことを理解し、というふうに描かれているように感じました。

あと、"パーティ"の意味が、本の一番初めの報道記事での扱われ方と、実際に本人が思っていた意味が全く違ったのには、うまいことするなぁと感心しました。そういう意味で言ったんじゃないのにとなることって普段からもあることですが、その言葉の中に込められた真の意味って外側からの情報だけじゃわからなくて、悪意を持って捻じ曲げてしまうこともできてしまうんですよね。絶対的な"意味"はなくて、受け取りてによっていかようにも変容しうる。だからこそ込められた真意をなるべく汲み取ろうとする努力はとても大事。表面上だけ切り取って、中を理解しようとしない、自身の価値観や経験から決めつける行為の傲慢さが身に染みましたし、気をつけたいと思いました。

まとめ

本の解説にもありましたが、この本についてはどう考えても、それってこういう考え方で言えばだめだよね、って作者から刺される気がする恐ろしい本でした。しかも、オチも、個人的にはかなりのやるせない感じで。でも、"正解はなく、想像力を働かせ、対話を続ければ、部分的にでも分かり合える、何かが変わるかもしれない"という、人匙の希望はある気がして、これから、その姿勢を心がけたいなと思いました。

多様性が叫ばれるこの時代に、立ち止まって考えるきっかけをくれる、この本を読めてよかったと思います。

NieR Replicant ver.1.22474487139... をクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

オリジナル版は2010年、本リメイク版は2021年にスクウェア・エニックスより発売された、ディレクター横尾太郎氏による、アクションRPGです。

store.steampowered.com

きっかけ

前から存在は知っていて、サントラだけは買って、プレイしたことないのに音楽だけ聞いているという謎の状態でした。この度、ニーアの音楽を演奏するオーケストラに参加させていただけることになり、そしてタイミングよくセールもされていたため、この機会にプレイしてみようと思い購入。

感想

23時間程度でEエンドまでクリア!

全体(ストーリー)

前情報として辛めの話だというのは覚悟していたので、むしろ思っていたよりも優しい話だなと感じました。いや別に展開は優しくないし、これはかなりレプリカントよりの視点で物語を捉えており、ゲシュタルト(元人間)側からみたらかなり救いのない話だとは思います。ただ、主人公が仲間や関わる人々に与えた純粋な気持ちと、それを受け取った周りの人々がその思いを返してくれるという構図は、信頼や愛は伝播するんだということを感じさせ、辛い世界ながらもそこに温かみを感じることができました。まあ、負の感情も伝播する様子もしっかり描かれているのですが...てっきりもっと、周りの人々からの信頼は得られず、一人で頑張った挙句、何もかも上手くいかずに終わってしまいました、って方向に行くかと思ってたので...ああ〜魔王のニーアに着目するとわりとそういう話になる...自覚してるよりも、自分はかなりレプリカント側の視点に寄ってるなぁ... 

下記、思ったことをちょっとだけトピック別に。

・フラットな視点で見ることの難しさ

作中の物語で強く感じたのは、同じ行為でも、立場が違うと意味が変わってしまうということです。ヨナを救う、ヨナにいい思いをさせてやりたい、という気持ちは、作中主人公のレプリカントニーアも、ゲシュタルトニーア(魔王)も、全く同じもので、そこに違いも優劣もありません。

二週目から、マモノ側の声が聞こえるようになり、薄々実感してはいたものの、かなり気の毒なことをこちらがやらかしていたことが判明します。マモノ側に、かなり申し訳ない気持ちになり、主人公側もなかなか話聞かないし悪いやつやなーと思ったりもしました。しかし、ふと、一方的な被害者、加害者の構図で見るのは良くないな、と思い当たりました。マモノ側の声がわかり、我々が一方的な思い込みで殺害した、完全な被害者であるマモノもたくさんいることがわかったからと言って、そして、マモノ側の暴力に、実は時には(ある意味)正当な理由(一方的な暴力ではなく、報復など)や意味があったとしても、これまでニーアや他レプリカントたちがマモノたちに受けてきた傷は変わりません。もちろん、これはお互い様の話であり、マモノ側も全く同じで、レプリカント側からの虐殺で受けた傷は、レプリカントが受けた傷という理由があっても、全てが正当化されるわけではない。それに、マモノの暴力は、病によるものも多く、自分の意思でやったことではないことも多くあると思います。でもこれもまた同じ話に立ち返り、やりたくてやったことじゃないなら許されるのか、という堂々巡りになり....まあ、このゲームではレプリカントは完全に生み出された存在であり、その点については完全な被害者と言えるかもかもしれません。ただ、こうやって、暴力にどんな意味があっても、受けた傷は変わらないって思ってしまうことこそ、戦争が終わらない理由なのかも、と思いました。人間は、生きているだけで誰かに迷惑をかけている存在であり、それを互いに許すことが大事なのかもしれないですね。なので、作中で主人公が、これまでの行為を全く気にせずに、カイネやエミールを受け入れたことは、救いだなあと思いました。だからこそ、主人公がマモノを、魔王を全く受け入れなかったことが悲しくなります。しかし、世の中にはどう頑張っても両立できないことってあるものなので、そこは、信念を通すしかなかったのかな... 似たようなことで、カイネが、「もう手遅れなんだよ、私達(自分とテュラン)は。今更引き返すことはできない」というところがあり、互いを許し合うという理想の世界はあるけれども、現実はそう上手くはいかない。村人を大勢殺したマモノを主人公は許せないし、罪のないマモノを主人公やカイネは大勢殺してきたし、デボルを殺されたポポルさんと仲直りはできないし。そんな中でできることは、自分の信念を貫き、今できることを探すことだけなんだ、という作中哲学みたいなのを感じました。

どうしてもどちらかが被害者みたいな対立構造で物事を捉えがちですが、ゲシュタルトレプリカントも、全員が加害者ではないし、逆に全員が被害者でもないんですよね(レプリカントは一方的に生み出されたものであるというきっかけを除く)。作中では、マモノもレプリカントも、互いにレッテルを貼り、一人が悪いからって全体を悪く見てしまっているところがあるかなと思います。そこが、いろいろと考えさせられるし、現実でも、ありとあらゆるものの間での争いというのは、ほとんど片方が完全に悪いといいきれるものは少なく、複雑に絡み合っていて、そしてどちらかが原因だ!と、いつまでも受けた傷にこだわっていては、争いは永遠に無くならないんだろうなと感じさせられました。

また、純粋なる悪意で動いていたものはほぼいなくて、例えばでかくて虐殺をしていたマモノも、そもそも病から自己が崩壊しているというのが発端で、他人を支配したり加虐することが生まれながらにして好きみたいなやつは(おそらくほぽ)いなかったのが印象的でした。物語の初めの人類も、マモノも、レプリカントも、お互いにただ生きたかっただけなんですよね。

それはこっちの台詞だよオ!!と思ったやつ(プレイヤーから制作者への思い)
・カイネとテュラン

個人的に、作中の登場人物の絡みの中で一番グッときたのは、カイネとテュランでした。二周目で急に出てきた上、作中でその人柄を知る機会も他メインキャラと比べると少ないテュランですが、描写が少ないながらも、カイネから受ける気持ちで変化していく様子はしっかり描かれており、最期の最期で、このままでいれば当初の目的である"乗っ取る"という自分の思い通りになるにも関わらず、自分ではなくカイネを優先したところは、辛いながらも、グッときてしまいました。

魔王の城での戦闘で、憎しみと怒りに染まるマモノに対して、お前(カイネ)と同じだ、俺の大好物だ!と喜ぶテュランに、「そっちも同じだろう」、「憎しみに、逃げ込んでいるだけだ。寂しくて苦しくて孤独だから、暴力で自分を誤魔化しているだけだ」とカイネ。俺はそんなんじゃねえ、と認めようとしないテュランに対し、しかしカイネは「いいんだ」「私もそうだから」と言います。このセリフが個人的には印象的で。カイネは、テュランに対し、テュランがそういう自分を誤魔化している、健全とは言い難い状態であることを指摘しつつも、それを直せとか、認めろとか、孤独を受け入れろとか、間違っているとか、そういうことは一切言わず、ただ「いいんだ」と、その存在を受け入れ、私も同じだ、とただ寄り添ってくれます。私は、カイネは、ニーアに赦された…すなわち、自分自身を、行為ではなく存在のレベルで受け入れてもらえたことで、それを自分にも、そしてテュランにもすることができたんじゃないかな、と思いました。カイネが主人公にもらったものを、テュランにあげたんじゃないかなと。そして、それを受け取ったテュランもまた、それをカイネに還したのかな~とか。赦しは、無償の愛とも近い気がするんですよね。魔王との戦いで、自分の剣の使い道を、主人公の刃となることに見出したカイネの中に流れた「ただ白く光るさらさらと流れる波」や、テュランが最後、自分の存在が消えることも厭わず、カイネの救いを主人公に求める様子には、それ(無償の愛)を感じました。(カイネを助けようとする理由を聞かれて、多分お前と同じだと言いますしね)

ここすき(辛い)(でもそれがいい)
・エンディングについて

それぞれの印象について書く前に、全エンドに共通する、"魔王を倒すことによる人類の滅亡"、あと"ヨナの寿命"について考えたことをつらつらと..

主人公の行動の結果、将来的に人類は滅亡するというのは、プレイ時にはわからず、資料集を見て知ってびっくりしました。少なくとも主人公は、明確に、自分の行為がそれをもたらすことを自覚はしてなさそうですよね。なんとなく、世界の意に反していることは自覚してそうですが。なんというか、世界を滅ぼすことを自覚してやるのと、自覚しないでやるのでは、結果は同じでも、受ける印象がだいぶ違うなと思いました。

また、エンド後、将来的に人類が滅ぶということを知った時、最初はええ〜BADじゃん!と思ったのですが、主人公たちだけに着目して考えてみると、別に自分たちの直接関わらない時代がどうなっていようと、なにも変わらないんですよね。それに、自分のやったことが、将来何をもたらすかなんてわからないですよね。特に現実世界では絶対にわからない....(例えば、もしかしたら今の生活が将来の環境破壊を誘発してるかもしれないし、してないかもしれない)なので、主人公の行為は、一人の命と引き換えに世界を犠牲にした、っていう印象はあまりなくて、ただ自分のできることをやった、って感じでした。人類が滅ぶという結末も、最終的には、悲しいというよりも、自然淘汰の結果みたいな、そんな感じで受け止めています。

また、ヨナの寿命について、資料集を読んだら、短命は結局免れないことが分かり、そこでもしょんぼりしましたが、これは、BADというよりも、仕方ないことかなあと私は感じました。人間、誰でもいつかは死ぬわけで、それがただ早いか遅いかの違いだなと。現実でも病気で亡くなる方は沢山いますし。まあ、これはかなーりドライな見方ではあり、自分の身内に対してもそう思えるのか?と言われると、やはり理屈では理解しても感情が追いつかないところはありますよね...そういう点では、私はヨナちゃんの死について、あまり自分ごととは捉えられなかったのかもしれないな。また、この、将来的には割とすぐヨナを失うということを、エンド後の主人公が受け入れられなかったら、個人的にはBADエンドになるなと感じました。作中、いい意味でも悪い意味でも、ヨナの病気や、ヨナの生死について、そのまま諦めず、言って仕舞えば受け入れずに何か方法があるはず、とずっと探し回っていたわけで...個人的には、物語の中で、そういう死を乗り越えられるように主人公が成長した感はあまり感じなかったので、若干不安です。共依存気味でもある気がするので、自分の生きる意味も見失わないかも不安。これに関しては、ロボット山の弟が悪い意味でいい例だと思います。兄の死を永遠に受け入れられず、自罰的になり、そして責任転嫁をし、それに生きる意味を見出してしまっているので...

ただ、主人公はカイネとエミールに生きる意味を与えてくれた存在なので、カイネとエミールがまた彼に生きる意味を与えてくれたら大丈夫かなという気はしますね。

 

・Aエンド

なんかいい感じに終わるけど…

いかないでェ

初めてクリアしたときは、魔王に気の毒だなとは思いつつも、ヨナは取りかえせたのでそこは素直に良かったな~と思って終わりました。今振り返ると、このあとカイネは一人できっと自ら命を断ちそうな感じがする、かわいそう。エミールは…どうなんでしょう?このエンドでは描写されていないだけで生きているのかな?

 

・Bエンド

いてくれるだけで嬉しいんだ

Aエンドと起きたことは変わらず、別視点が足されるエンド。ここで、ヨナに、辛い思いしかさせてやれなかった、救うことができなかったとこぼすゲシュタルトニーアがつらい。でも最後に、ヨナが、「おにいちゃん、ずっといっしょにいてくれて、ありがとう」というのが、ああ、ヨナはいい子だなあと…おにいちゃんがなにをしてくれたとしても、そばにいてくれただけで、ありがとうと言えるのは、他人に、その人の行為に対してではなく、存在レベルで感謝できているので、見習いたいなあ。辛い思いばかりだったのは本当かもしれないけど、おにいちゃんがそばにいてくれたことが嬉しかったのも本当で、それは、辛かったことで打ち消されるものではないんですよね。プレイ中はあまり実感していなかったんですが、こうやって感想を書いていると、ゲシュタルトニーアが可哀想で仕方なくなってきました。

 

Cエンド

せつない

カイネを殺すエンド。個人的には、Dエンドよりもこの切なさがちょっと好きだったりします...テュランがカイネの最後の言葉を伝えるところとか...

 

・Dエンド

思い出せない

自分の存在をセーブデータごと消すエンド。セーブデータを消すというのは、実は結構前に何かの折にそういうゲームがあるっていう話を聞いたことがあったので、あまり驚きはなかったのですが、実際にやられるとなんかおお〜って感動しました。

 

・Eエンド

どんな状況でも、どんな状態でも、人には生きる価値がある

小説だったものをリメイクで追加されたそうで。個人的には、Dエンドを終えた後の喪失感が結構好きだったので、結構簡単にカムバックできるんだ、ってちょっとだけ拍子抜けしちゃいました笑なかった方が、個人的には美しくはあったかな〜、シロちゃんが出てくるところもちょっとファンサ感あった...いやもちろん嬉しかったけど。カイネのありがとうに対するシロちゃんのリアクションにもめちゃグッときたけど。(ちょろい)でも、最後に一つくらいはいい思いしたっていいでしょ?とも思うので、これはこれでアリだし、演出もアツくてよかった。オリジナル版プレイした人へのご褒美なのかもな、とも感じました。ただ、テュランの出番がなかったのだけが寂しいっす!!!!!!!和解した後の二人のコンビをカイネ視点でプレイしたかったよォー!!

私達の旅は、無意味だったのかもしれない。僕たちの過去は、間違っていたのかもしれない。でも、後戻りはしない。たとえ、この世界が終わるとしても。ここは、大切な人がいる世界だから。という最後の台詞が、印象的でした。意味があるとかないとか、正しいとか間違っているとかって、人間が勝手に自分の価値観でそう意味づけするだけなんですよね。人生は選択の連続であり、人は何かを選ぶしかない。後戻りはできない。そして、選んだ自分を信じるしかないんです。過去の選択について後悔したり意味を求めるよりも、ただ、大切な人が目の前にいてくれて、幸せを分かち合えることがいちばん大事なのかもしれないですね。

 

・ゲーム的なところ

全ての行動を言葉で修飾して強化するというのは、なかなか独特なセンスで面白いなと思いました。

ただ、周回は正直ちょっと大変でした笑作中、周回することの物語的な意味付けがあったら、もっとよかったかな。シロちゃんが、二回目となると色々あるのだって言ってましたけど、多分これはただのメタ発言な気がする...もし何か見逃してたら申し訳ないですが...

あと、おっさんニーア版もやってみたかったなあ。シロちゃんとの掛け合いの雰囲気とかめちゃ良さそう。

音楽

オリジナル版のサントラを買ったのが調べてみたら2012年だったので、12年ごしにプレイしたことになりますね。昔聞いたときにはどんな世界なんだろうって想像していたんですが、実際にプレイしてこんなだったんだ~って謎に答え合わせみたいな気持ちでやってました。やっぱりいいですねえ。イニシエノウタは戦闘曲になるのが悲しいけどテンション上がったし、魔王の曲は最序盤の新宿シーンでは救いがないBGMだなあって印象が残っていて、最後の魔王戦ではオルゴールに変化していくのがアア・・・・・・・・って感じだったし、キャラのテーマが色々雰囲気を変えて流れるのも良かった。

個人的に一番好きなのは、実は15Nightmaresアレンジの魔王 - Crying Yonah Versionだったりします…15Nightmaresアレンジ全体的に好き。

グラフィック

私は廃墟が大好物なので、作中のロケーションは大変美味しくいただきました。全体的にずっと光が刺しているので(夜が来ないらしい)、廃墟に刺す光成分もたくさん味わえて最高でした。

かつての線路の名残とか

海に沈む線路とか

工場跡とか(夕焼けの碧と朱がきれい)

老朽化したエスカレーターがたまらない

キャラ雑感

主人公

レプリカントニーアはとにかくヨナだけしか見えてない印象だった。少年期も青年期も、愚直さが魅力であり、危うさでもあるキャラクターでしたね。

ゲシュタルトニーアは、ただただ気の毒だったな…

白の書(シロちゃん)

萌えの宝庫。最初偉そうだったのにどんどんいいやつになってきて最高だった。口うるさいの可愛すぎる。主人公の、特に少年期の素直さ、純粋さ、(例えば、シロちゃんが「いつか自分が消えてなくなることがあるとしたら…」に対して、「そんな縁起でもないこと言わないでよ、そもそも紙なんだからそんなときは来ないよ!って言ったときなど)失うことを知らない、まだ大切なものを失っていない、自分がすでに諦めた希望をまだ持っている様子に対してシロちゃんが向ける、少しの憐憫や憧れみたいな気持ちと、どうにもならない理不尽な現実に対して、駄々をこねる子供をあやす親みたいな様子が、好きでした。

また、青年期になって丸くなったシロちゃんにすごいグッときました。一方で主人公はお人好しさは残っているものの結構擦れており、昔と態度が少し逆になっているのもまた美味しかったですね。

主人公の素直さに呆れながらもその光に惹かれる様子が好き

いかないで(血涙)
ヨナ

レプリカントヨナちゃんは、日記で「役立たずじゃないよね」って書いてあったところが苦しかった。あと、もう病気を治すのはいいから、一緒にいてほしいっていう願望が兄とすれ違っているのもなかなか寂しかった。エンド後は一緒にいてあげてほしい。

ゲシュタルトヨナちゃんは、最後自らの意志でレプリカントヨナちゃんに体をあげたのが偉すぎた。作中で、もしかしたら一番大人かもしれない。見ず知らず(レプリカントではあるけど、ヨナの認知的には全然知らない人だと思う)の人の気持ちを尊重して、自らを犠牲にできるなんてね…

カイネ

前からそのセクシーな見た目だけは存じ上げていたお方。イラストではお胸に目がいってましたが、実際にプレイすると、お尻と太ももが大変魅力的でしたね。特に太ももにこだわりを感じる。なんか途中から別ゲーですみませんがエスティニアンみたいだな...ってずっと思ってました。勝手に行動するところとか、口悪いけど冷たくはないところとか、励ます時素直にならず冗談いうところとか。

口の悪さで隠しきれない、ちらちらみえる優しさがグッとくるキャラクターでしたね。ときおり言ってくれる"ありがとう"が優しすぎて泣く。ヨナちゃんよりも二週目以降はずっとカイネがヒロイン感あった。なんならマモノの声を知る分むしろ主人公感すらあった。初めは色々諦めてる感じだったけど、魔王の城あたりやEエンドでは、世界の理なんてうるせ〜!しらね〜!!する態度が、主人公のが感染ったなって感じで良かった。

上述しましたが、テュランとのコンビが、特にラスト良かったな。私の好きなバディ成分が終盤一気にグワってきて致死量だった。

なんだか具体的で好きな悪口笑

エミールには結構素直なのカワイイ

この元気づけ方が好き

最後の二人の関係が好きだ……
エミール

この子も、兵器化した後の見た目だけは知ってました。中身はとっても可愛くてびっくり。印象的だったのが、仮面の街で、昔の技術の話があったときに、夜は明かりがあったとか、鉄の箱で移動できた(電車ですね)とか言う話に対して、夜明るかったら寝れないし、鉄の箱で移動する用事もないし、ぼくは、今の世界で十分楽しいですよ!とエミールは言うんですね。他ゲー(FF14)で好きな台詞で、知的生命体は、往々にして、完全な幸福を求めようとする。この障壁を超えられることがあるとすれば、完全ではない幸福に、それでもひたむきになれることだ。というのがあるんですけど、実際、人間って、一度美味しい思いをすると、その上を求めるようになるんですよね。一回味わっちゃうと、元に戻るのはなかなか難しい。エミールのこのいい意味で高望みせず、今ある幸せを喜ぶ姿勢が、すごく眩しいなと個人的に思います。

自分の過去が今を作ったと、頑張って胸を張っているのが好き

まとめ

厳しくままならない世界の中のなかで足掻く主人公たち。そんな中でも、仲間たちとの心の交流によって、「受容」が伝播していく様子。そして、正義も悪もなく、皆ただ生きたかっただけであったというやるせなさ。これらが印象的なゲームでした。

FAR: Lone Sailsをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2018年に発売した、Okomotiveというスイスの会社が作成したアドベンチャーゲームです。かつて海だった、文明の遺産が残存する世界を、帆を持つ車のような「船」でひたすら進んでいきます。

store.steampowered.com

きっかけ

ポストアポカリプスものが好きなのでウィッシュリストには元々入っていて、steamでめちゃくちゃセールしていたので購入。

感想

全体

油絵のようなスタイル

セリフや説明などは一切なく、視覚情報のみで展開していくのが印象的でした。画面は自分の船と周りの景色だけで全然代わり映えしないし、とくに伏線や衝撃の事実みたいなのはなく、明確なストーリーもあまりなくて、淡々と、主人公の動機も分からずひたすら果てを目指していくだけなのですが、音楽とグラフィックによって感じられる空気感、空間的・時間的な奥行きがとても素晴らしく、自分で動かせる絵画、みたいな感じの印象でした。ただ絵画と違う、ゲームならではなのは、自分の力で進んでいくことですよね。船は結構すぐに燃料切れしてしまうので、こまめに補給してやらないといけないし、故障してしまうこともあるので修理もしてやらないといけない。速度もそんなに早くないので、時間がかかる。これらが積み重なり、遠い「果て」を目指して進んできた、という体感を、プレイ中に味わうことができるので、たどり着いたときの感慨深さはやっぱり自分で操作することでしか味わえなかったんじゃないかな~と思います。また、そういう、「何も応えてくれない、答えはわからない、そこにあるのはただ名残だけ」という、ある種突き放していくスタイルが、廃墟の魅力とマッチしていたと思います。とても好きなスタイル…

あと、パズル要素が意外と難しかったけど、解くための情報を言語情報一切なしで察させる演出は上手いな~と思った。特に一番最後、船が真っ二つに折れてしまったときに、どうすればいいのかわからずしばらく呆然としていたら、風が吹いてきて、船がつつ…と少し自走したのをみて、帆を動かせばいいんだ!と気づくことができたときには感心しました。

プレイ中に印象的だったものをいくつか…

・人々の名残

動かしている船には動力が必要なのですが、これには道中で拾ったものをなんでも使うことができます。拾えるものにはいくつか種類があり、いわゆる一般的な"燃料"以外にも、人々の生活の名残を感じられるものもあります。例えば花が一輪咲いている植木鉢や、マガジンの束、ボールなど。こういう間接的な描写で人の存在と時の流れを感じさせるの、いいですよね…中でも好きな拾い物が、ラジオです。このラジオ、おそらく船の燃料にしてしまうことも可能なのですが、そうしないで持っていると、途中で少し電波が入るところがあるんですよね。音楽が聞こえてきたり、人の声のようなものが聞こえたり。プレイ中聞こえてくるのは、自分の船が動く音と、他には崩壊した建物の鉄が軋む音とか、それくらいしかないので、特に「音楽」という文明を感じる物を聞くとそれだけで温かみを感じる体験ができて、良いな~と思いました。また、場所によって入ってくる音も違うし、新しく訪れる場所について、"ラジオが入る場所"という情報が付加されることによって、よりその場所の"時の流れ"にを感じることができるというか…

また、そのような人の名残を感じさせるアイテムも、先に進む燃料として使わざるを得ない状況になってしまった時の切なさも良かったです。

この部屋においてあるのがラジオ

・文明の遺産

ポストアポカリプスもので味わいたい成分が存分に味わえました。おそらく昔は海だったんだろうなという名残が感じられる風景があったり、(主人公の乗る船の部屋に海の絵が書いてあったりする)

巨大な船

昔はガンガン開発してたんだろうな…とか、名言はされないけどビジュアルで感じさせる時の奥行きがたまりませんでした。こういう、ある種傲慢とも言えるくらいのピカピカスローガンの看板が無惨にボロッボロになってるの好きなんス…

WE BUILD OUR FUTURE

・自然の力

作中、人類の文明の遺産が、錆びたり、風化や摩耗している様子だったり、途中で雹みたいなのが降ってきて、船が故障したり、トルネードのような現象に遭遇したり、火山が噴火して船が満身創痍になるのを体験して、自然には抗えないな…と、時の流れに対する、人類の弱さと、自然の力強さを強く感じました。

自然には勝てない

一方で、そういった恐ろしい嵐のあとだったり、崩壊した建物にたどり着いて、すこし寂寞感や寂寥感を感じているときに、星空をみると、どんなことがあっても、やっぱりきれいだなあ‥としみじみ思い、自然の雄大さも感じることができました。

星空はいつでも変わらずそこにいる

音楽

基本的に、音楽は常にかかっている感じではなく、要所要所で旋律が流れる感じで、それが、寂寥感を感じさせるとともに、音楽のかかるところでは少しエモーショナルな気持ちを呼び起こされてよかったです。基本的に弦楽器やピアノのしっとりとした音楽でとってもマッチしてました。

また、船を動かす時の音をゲームプレイ中かなりの時間聞くことになるのですが、聞き慣れていくにつれ、だんだん安心する音になっていくのが面白かったな。

アート

ほんと好き。特に時間が移り変わる時の色変化がとても好きです。

朝焼け

あ~最高

モノトーンな雪景色も好き

ここから少しづつ色づいていって

"色"を感じられた瞬間がとても好き

ここの最後のゆっくりとした時間による空の色変化が

すごく好き…

まとめ

いわゆる雰囲気ゲーではありますが、一級品の雰囲気を提供してくれていて、ポストアポカリプスものに求めるものをすべて味わえました。廃墟最高!