感想置き場

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FAR: Lone Sailsをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2018年に発売した、Okomotiveというスイスの会社が作成したアドベンチャーゲームです。かつて海だった、文明の遺産が残存する世界を、帆を持つ車のような「船」でひたすら進んでいきます。

store.steampowered.com

きっかけ

ポストアポカリプスものが好きなのでウィッシュリストには元々入っていて、steamでめちゃくちゃセールしていたので購入。

感想

全体

油絵のようなスタイル

セリフや説明などは一切なく、視覚情報のみで展開していくのが印象的でした。画面は自分の船と周りの景色だけで全然代わり映えしないし、とくに伏線や衝撃の事実みたいなのはなく、明確なストーリーもあまりなくて、淡々と、主人公の動機も分からずひたすら果てを目指していくだけなのですが、音楽とグラフィックによって感じられる空気感、空間的・時間的な奥行きがとても素晴らしく、自分で動かせる絵画、みたいな感じの印象でした。ただ絵画と違う、ゲームならではなのは、自分の力で進んでいくことですよね。船は結構すぐに燃料切れしてしまうので、こまめに補給してやらないといけないし、故障してしまうこともあるので修理もしてやらないといけない。速度もそんなに早くないので、時間がかかる。これらが積み重なり、遠い「果て」を目指して進んできた、という体感を、プレイ中に味わうことができるので、たどり着いたときの感慨深さはやっぱり自分で操作することでしか味わえなかったんじゃないかな~と思います。また、そういう、「何も応えてくれない、答えはわからない、そこにあるのはただ名残だけ」という、ある種突き放していくスタイルが、廃墟の魅力とマッチしていたと思います。とても好きなスタイル…

あと、パズル要素が意外と難しかったけど、解くための情報を言語情報一切なしで察させる演出は上手いな~と思った。特に一番最後、船が真っ二つに折れてしまったときに、どうすればいいのかわからずしばらく呆然としていたら、風が吹いてきて、船がつつ…と少し自走したのをみて、帆を動かせばいいんだ!と気づくことができたときには感心しました。

プレイ中に印象的だったものをいくつか…

・人々の名残

動かしている船には動力が必要なのですが、これには道中で拾ったものをなんでも使うことができます。拾えるものにはいくつか種類があり、いわゆる一般的な"燃料"以外にも、人々の生活の名残を感じられるものもあります。例えば花が一輪咲いている植木鉢や、マガジンの束、ボールなど。こういう間接的な描写で人の存在と時の流れを感じさせるの、いいですよね…中でも好きな拾い物が、ラジオです。このラジオ、おそらく船の燃料にしてしまうことも可能なのですが、そうしないで持っていると、途中で少し電波が入るところがあるんですよね。音楽が聞こえてきたり、人の声のようなものが聞こえたり。プレイ中聞こえてくるのは、自分の船が動く音と、他には崩壊した建物の鉄が軋む音とか、それくらいしかないので、特に「音楽」という文明を感じる物を聞くとそれだけで温かみを感じる体験ができて、良いな~と思いました。また、場所によって入ってくる音も違うし、新しく訪れる場所について、"ラジオが入る場所"という情報が付加されることによって、よりその場所の"時の流れ"にを感じることができるというか…

また、そのような人の名残を感じさせるアイテムも、先に進む燃料として使わざるを得ない状況になってしまった時の切なさも良かったです。

この部屋においてあるのがラジオ

・文明の遺産

ポストアポカリプスもので味わいたい成分が存分に味わえました。おそらく昔は海だったんだろうなという名残が感じられる風景があったり、(主人公の乗る船の部屋に海の絵が書いてあったりする)

巨大な船

昔はガンガン開発してたんだろうな…とか、名言はされないけどビジュアルで感じさせる時の奥行きがたまりませんでした。こういう、ある種傲慢とも言えるくらいのピカピカスローガンの看板が無惨にボロッボロになってるの好きなんス…

WE BUILD OUR FUTURE

・自然の力

作中、人類の文明の遺産が、錆びたり、風化や摩耗している様子だったり、途中で雹みたいなのが降ってきて、船が故障したり、トルネードのような現象に遭遇したり、火山が噴火して船が満身創痍になるのを体験して、自然には抗えないな…と、時の流れに対する、人類の弱さと、自然の力強さを強く感じました。

自然には勝てない

一方で、そういった恐ろしい嵐のあとだったり、崩壊した建物にたどり着いて、すこし寂寞感や寂寥感を感じているときに、星空をみると、どんなことがあっても、やっぱりきれいだなあ‥としみじみ思い、自然の雄大さも感じることができました。

星空はいつでも変わらずそこにいる

音楽

基本的に、音楽は常にかかっている感じではなく、要所要所で旋律が流れる感じで、それが、寂寥感を感じさせるとともに、音楽のかかるところでは少しエモーショナルな気持ちを呼び起こされてよかったです。基本的に弦楽器やピアノのしっとりとした音楽でとってもマッチしてました。

また、船を動かす時の音をゲームプレイ中かなりの時間聞くことになるのですが、聞き慣れていくにつれ、だんだん安心する音になっていくのが面白かったな。

アート

ほんと好き。特に時間が移り変わる時の色変化がとても好きです。

朝焼け

あ~最高

モノトーンな雪景色も好き

ここから少しづつ色づいていって

"色"を感じられた瞬間がとても好き

ここの最後のゆっくりとした時間による空の色変化が

すごく好き…

まとめ

いわゆる雰囲気ゲーではありますが、一級品の雰囲気を提供してくれていて、ポストアポカリプスものに求めるものをすべて味わえました。廃墟最高!