感想置き場

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終焉のヴィルシュをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2021年にオトメイトから発売した女性向けADVゲーム。人々が23年しか生きられない呪いを持ち、しかしそれに対してクローン技術で生き延びている国が舞台で、そこで周りの人に不幸を呼び寄せるとして死神と呼ばれてしまう主人公の女性を巡って、物語が繰り広げられます。

 

きっかけ

今まで乙女ゲームをほぼやったことがなかったのですが、最近いくつかやってみて、なかなか面白いなと思い、他にもないかな〜と思っていたところ、Twitterで何個かピックアップされておすすめしてくれているツイートがあり、その中で一番気になった(話が重くてメリバ好きにいいと書かれていた)のでプレイしました。メリバは別に大好きとかではないんですけど、暗い展開が好きなのでどんなもんじゃいと思ってやってみた次第です。

 

感想

全体(ストーリー)

絶望エンドと救済エンドという二つがあり、絶望エンドはありとあらゆる面でハピエンへの道が綺麗に閉ざされ外堀が埋められていくのが執念を感じました。笑希望をちらつかせてこれもダメだよ〜!!って一つ一つ可能性を潰していくんですよね。いわゆるバッドエンドに力が入っていて、選択ミスによって死んじゃいましたとかその後そのままの生活を送りました...とかいう中途エンドではなく、ガッツリ結ばれるくらいまで仲良くなった上でそこを断ち切ってくるので、そういうああ〜かわいそう!!って栄養素はたくさん摂取できました。ふんわりファンタジーは受け入れるまでちょっと時間がかかりましたが、感情が受け継げないっていう設定はなかなか面白いなと思いましたね。

あとみんな髪長いね!!

 

キャラ雑感

ルート攻略順で。初めは3人しか選べず、この時点で一番シアンが気になってはいたのですが好きなものは残しておくタイプなので、展開が王道そうだなと思って(性格がいいひと〜って感じだったので)リュカ先生からはじめました。

 

リュカ

ぜんぜん王道ではなかった。初っ端から人殺しかよ!!って笑っちゃった。初めてプレイしたルートでびっくりするくらい人が死んだのでびっくりした(びっくりしすぎて日本語終わった)。被害の規模のデカさが、アドルフルートに次ぐデカさなんですね。このゲームの洗礼を受けた気分でした......カプシーヌ先生もこういう神経質そうな人が優しいのいいよねとか思ってたら作中でも群を抜いて変態のクズで悲しかった。笑しかも監禁されるし、(そのタイミングでは)こんな倫理観終わってる人に恋することになるのか...と、初っ端からこの乙女ゲー..普通の恋愛、ない感じ...?ってちょっと不安になりました。先生自体の人格は薬でいじられており本来は真っ当であるというのには安心しました笑あの薬、効果がいい意味でご都合爆発してて好きです。薬であんなに都合よく従わせるの無理でしょ。あと実は片思いというか、物語開始よりも前から先生の方が好きになっていたパターンでしたが、そのきっかけがなんとも一方的で、やっぱりちょっと怖くて、恋愛過程もあまりついていけなかった...まあ幼い頃からずっと薬のせいでまともな精神状態と普通の精神状態が入り混じっていると思うのであまり普通の価値観で考えても仕方ないとは思うんですけどね。ナディアはいい子でしたねえ。すでにブローとして人殺しをしている上、街の人をたくさん殺し、絶望エンドではナディアとも対話できず終わり、希望の芽が綺麗に一つずつ摘まれていき精神が壊れていくのはここまで来ると芸術だな!!と勝手にウケてた。ただ絶望エンドは壊れきるのではなく自分がセレスを殺したことにもっとずっと苦しめられて欲しかったですね。(我ながら酷いと思う)

救済エンドは、まああの状況からハッピーは無理だよなと...ただ、正直想い人をその手で断ったアンクゥのかわいそうさの印象がデカすぎて...

あとブローの服装が好きです。ポニーテールsukiyanen.

余裕がないのがいいよね

ここ、やべーやつじゃん...ってずっと引いてたけど、弱みをここで見せてくれたので可哀想度がグッと上がって良かった

 

マティス

人殺しの次は人造人間かよ!!ってまた笑っちゃった。彼は、何もかもが作り物、偽物、借り物だったけど、それでも周りの人と交わって、その思い出は嘘じゃない、自分だけのものであって、その中から"自分"を見出す、生み出すっていう展開はすごく好きなので、どんなになっても愛は失われないっていうところはいいね!!と思ってみてました。絶望エンドのオチはそこをうまいこと捻じ曲げてきて、感心しましたね。愛は失われなかったけど対象が違うっていう。彼は出自は特殊ですが、物語自体は結構王道な展開だったと思います。

 

シアン

こういう、初対面の印象が悪めな奴ほど、絆されたときのギャップがでかいので、おたのしみにとっておいたんですが、思ってたよりも何倍も美味しくて大変嬉しかったです。まずそもそも初対面の印象が悪めって書きましたが、シアンは少なくとも今回の舞台中では悪意とかはこれっぽっちもなくて、本当にただ効率とかを見ているだけなので、むしろ腹の底がわかりやすいというか、嫌な奴ってよりも理にかなってる奴だなという印象だったので、そういう奴が感情に振り回されちゃうんでしょ??っていう期待を持ってプレイした感じでした。見事に応えてくれました。

絶望エンドが本当にたまらなくて、この作品イチ好きなんですけど...プレイしてる間、絶望エンドは、どちらかというと両思いになったと思ったけど結局はこっちの片思いで、シアンは感情を抱けずこちらをモノとしてしか実は見てませんでしたって感じのオチになるのかな〜なんて思ってたんですが、しっかりガチ愛されて、しかもそんな彼を目の前で庇って死ねるなんて最高ですよね!!あんなに感情は不要だって言ってた奴が絆されるって過程がまず最高ポイント+100で、次にじゃあその感情を持ち越せるリライバーの体を開発してそれに生まれ変わって感情を得た途端、その感情を得るきっかけとなった対象を失い、せっかく感情を得ることができるようになったのに、初めて感じる感情が、愛ではなく喪失の痛みで、感情を得たからこそ今までになかったものに苦しめられているっていうところが可哀想で最高ポイント+5億で、さらにキスできたのが前の体で今の体はもうその温もりはないところがさらに倍率ドン!さらに倍って感じで、エンドの震え声が声優さん本当ありがとうって感じで、そこの独白がもうすごいあんなにセレスに対して上から目線だったのに素直っていうか懇願してるっていうか、頼む......ってなあ!!!!すごい弱ってて最高ですね!!!!!あと個人的に嬉しかったのが完全に精神崩壊はしてないところです。いや、側から見たら崩壊してるのかもしれませんが、なんというか、セレスが現実にはいないっていうことを理解してるので、リュカの絶望エンドとかは完全に空想の世界に行ってしまって、むしろ本人は楽しそうなんですけど、シアンの絶望エンドはセレスがいないことはわかってるのでそれに対してシアンがず〜っと苦しむことになるんですよね〜たまりませんね〜自分が目を覚ますきっかけをくれた相手は、目を覚ました時には、目を閉じてるんよ......あとスチルたまんないっすよね.....何その顔...

可哀想(最高)

あと、自分は神の名を騙る罪人だとか言って実験をわざわざ見せてくれるの、フツーにいい人ですよね。いい人っていうか、誠実?うーん、ちゃんと向き合ってくれているというか。このルート、セレスが、シアンは自分をまっすぐ見てくれるのが好きって言ってたけど、これもそれな気がします。あと書いてて思ったけど、逆にシアンの方も、自分のことを肩書きではなく本人を見てくれて嬉しかったのかもなとか思いました。所長扱いしないのはもちろんのこと、パズルを捨てないとか、ラストの、あなたは人間を救いたいのに、延命になってない?手段と目的違ってない?って指摘するところとか、相手の気分のいいことをいうとかそういうのではなく、本当の意味で相手のためを思って、そして自分の考えを持ってぶつかってくれるその姿勢が良かったのかも。そういう点で、ダハトとは結構いいコンビだと思ったんだけどな...

あと、途中でセレスが、優先的に実験体にするなら死刑囚や犯罪者が先というか...と考えるあたり、自分もだいぶシアンさんに毒されているな、と思うシーンがあるんですけど、こういう相手の価値観が自分の一部になっていくのいいですよね〜。このルートのセレスは結構好きです。

アンクゥが語った昔の方のシアンは今よりも結構ひど目な感じで、この当時も悪意はないと思いますが、もっと人を道具としてしか見てない感があるなぁとなんとなく思って、それはもしかしたらセレスと会わなかっただけでなく、ダハトがいなかったからかもとかちょっと思いました。

このルートは攻略キャラの生首が出るとは思いませんでしたね〜

 

イヴ

3人を攻略したあとでようやく解放されるので、何かバカ高い秘密とかエグい裏とかなんかあるのかと思ってビクビクしてたんですけど、予想外に普通の人(いい意味で)でした。最初二個がインパクトデカすぎてですね...

ヒューゴの存在が物議を醸しそうですね〜横取りしたみたいでなんかちょっと気の毒になってしまいました。

あと、ルート中で面白いなと思ったのは、ヒューゴが自分と同じ目線で生きて欲しいと思って彼らしさを潰し押し付けていた、あいつにとって必要なのは理解じゃなくて共感だったんだな(リコリスの花畑に対しての態度とか)っていうところです。人によってそこの重要度って違うのでなるほどなぁ〜と思いました。

もう一つ、仮面の下の話ですけど、どんだけ酷いんだろう!!って期待してたらそんなにひどくなくて拍子抜けしちゃいました笑普通に顔の形してるし...なんかもっと異形みたいなの期待してた...その下の傷も、醜いけど自分の一部で、生きてきた証だ、それごと愛する、っていうのは好きなんですよ、自分の変えられないところは嫌いになるとか無かったことにするんではなく愛しましょうというのは、好きな考えです。ただ、その傷が意外と見た目が普通なのであんまりそこがグッと来なかったというか...いや、心の救済的の描写的には、わたしにとって普通なことは本当は関係なくて、本人にとってそうでないことが描写されているので問題ないのですが(仮面が外れて取り乱すところは最高だった)ただ物語として、こう、そんな醜いところでも、それでも愛する!!感が、見た目のインパクトが小さくて印象に残りづらかったかな〜。あと、傷の原因であるセレスがその傷をむしろ綺麗っていうのはなんかちょっと...いやイヴ自身もセレスは原因ではない、自分がやりたいから助けただけ、っていう、自他境界がはっきりした認識をしているので、イヴにとって問題ないんでしょうし、むしろ想い人にそう言われて嬉しいまであるんだと思いますが、どうしてもわたしは割り切れなくて、いまいち入り込めず、よくセレスそんなこと言えるなってちょっと思っちゃった笑

イヴルートは前3人のルートで明かされた情報をふんだんに使っていろんな展開があるわけですが、そのオチが、世界を敵に回して君を救う!で、これは好みの話なんですけど申し訳ないけどグッと来なくて、どっちかというとアンクゥの救い方の方が好きで、私は何かを救うために自分を犠牲にするタイプの方が好きなんだって気づきました。絶望エンドは恐怖!人体自然発火現象!!って感じで、うわー!!!みんな死んじゃうよー!!!!ってなんか絶望なんだけど勢いがすごくて笑っちゃった。目の前で攻略対象が焼死体になるのはキツイですね。ていうか科学的に自分がガチで死神でしたって判明するのは珍しい気がする。科学的に死をもたらすってわかっちゃったら役立つ形で死ぬのが最善じゃない?って思っちゃったところもありました。これ、ファンタジーでその身が死を呼び寄せるっていう設定だったらあんまりそう思わない(犠牲になって死ぬ方がいいってすぐには思わない)のに科学的にそう言う体質ですって言われたら死んだ方がいいって言うのを割と受け入れてしまうの、私が科学信者なところがあるのかもしれないな...

イヴはずっと身近に感じることができなくてこんな感想になっちゃいましたが、アドルフルートでアドルフに神格化された時に、「い、いやいや、だってさ…....!物語の英雄のような存在って、言われても一そう見えるように振る舞ってるんだから当たり前じゃないか......」って答えるシーンがあり、そこでなんか急に親近感湧きましたね。完全に天然英雄ではなくてむしろ見返りを求めて頑張ってるところもあるっていう。いや、見返りを求めて優しくしてるんだっていう話はもちろんイヴルートでしっかりありましたけど、なんというか、自分からそういうのと、周りに神格化されてそれに対して突っ込む形でいうのとでは、なんとなく感じ方が違う気がする。

 

アドルフ/アンクゥ

どこで分岐するんだと思ったらまさかの同一人物でした。時間旅行の話や寿命の話はちょいちょいでてきていたのでなんとなく予想はしてましたが、ダハトは予想外でしたね〜。結構いいキャラしてると思ってたので健全に仲良くなるルートがなくてかなC。ダハトが普通の死生観を持つアドルフを尊敬し、それに対してアドルフが実験で得た不死性で反撃した時にキレたのがなんか印象的でした。あと、感動の再開!のはずが感情を引き継いでいなくてそうはいかなかったっていうのも、その人をその人たらしめるものってなんなんだろうかと少し考えさせられました。全く同じ経験をしても、そこから何を受け取ってどう感じるかは人によって価値観や捉え方が違うから人次第で、なので記憶というか経験した事実だけを受け継いでも、そこから感じたものを忘れてしまうと、自分の価値観や捉え方も忘れることになり、だから思っているよりも別人になるのかもなぁ。自分で自分のこと思い返す時も、あの時なんであんなに頑張ってたんだろうとか思うことありますよね。行動した事実は覚えていても、そのモチベーションとなる感情を忘れてしまうと、極端な話ただ記録の本を読んで暗記しただけの別人ということもできちゃうのかもですね。それこそ、マティスだな。

あと、ダハトがなんやかんや満足して逝きましたが、それに対してアンクゥがすっっげーキレてるのがびっくりしたし好きになった。ていうかこのルートはアンクゥが典型的飄々とした掴めないキャラなのにその根っこは素朴なアドルフで、その頑張って被った仮面がだんだん剥がれて激情や疲れ、悲しみなどがみえていくところがたまらんでしたね。アドルフバレした後のアンクゥかすごく好きなのでもっと過ごしたかった。私が俺になっていくのたまらんね〜!実を言うと少しばかり君の姿や声を忘れていたんだ。って言うところも、いやそうだよね、とむしろ現実的と言うか素直と言うか、ずっと忘れないって言ったって人間である以上やはり限度はあるわけで、いくら言葉でそう言ってもやっぱり薄れていくと言うことを正直に伝えてくれたのか、なんというか愛の力で不可能も可能!永遠に...って言うおとぎ話ではなく、摩耗が感じられて良かった。アンクゥと結ばれるルートはないんですか???ファンディスクやればいいのかな、、、、

 

まとめ

全体的に暗くて、色々ご都合なところはあるけど、インスタントに可哀想成分が色々摂取できて良かった。シアン絶望エンドが最高だったのでこれだけでお釣りくる。