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Venbaをクリアしました(ネタバレあり感想)

ゲームについて

2023年に発売した、料理アドベンチャー?ゲーム。南インドからカナダに移住した夫婦とその子供の物語を、南インド料理を作りつつ体感します。未日本語化。

store.steampowered.com

きっかけ

2023年に発売したゲームの中でおすすめ、というリストに入っており、私は以前からインド料理には興味があって、自分で作ったりお店に行ったり結構しっかりハマっていたのでマークしていました。この前別ゲーで、ハーフの人がもつ、自分のルーツに対する悩みについて知る機会があり、私は自身の人生の中でルーツについて悩んだことが、というかルーツが悩みになることすらほとんど知らずに生きてきたため、その悩みについて理解したいと思うようになりました。このゲームはハーフではなく移民ですが、ルーツに対する悩み、所属に対する悩みという点では重なる部分もあるかな、と思い、プレイに至りました。

 

感想

プレイ時間は約3時間弱。英語は時たま文脈がわからず?となるシーンが何個かありましたが、難しい表現もなく、スムーズに行けました。料理が美味しそう、音楽が最高、ストーリーは特別何か面白い展開があるわけではありませんが、丁寧に移民一世と移民二世の悩みが描写されていて、異なる文化に触れる楽しさと、自分にはない悩みについて考えるきっかけをくれる、良いゲームでした!

 

以下、トピック別に記載。

・移民の人々の悩み

移民一世と二世では悩むところも違うんだなと勉強になりました。移民一世であるVenbaと旦那さんは、例えば旦那は学位を持っていて、おそらく南インドの地元では知識階級の職につけるのに、カナダではカナダでの仕事経験がないとだめです、と断られ、持っている能力にふさわしい職になかなかつけないだとか、おそらくレイシストからの暴行被害だとか、言葉の壁とか。物理的にコミュニティに馴染めないというのが大きな悩みなのかなと感じました。それに対して、移民二世である息子は、言葉の壁はありません。一方で、"普通になりたい"と言ったり、お弁当を食べずに持って帰ってきてしまったり、ビリヤニ持っていきなよって母さんが言ったら車が臭くなるからヤダとか言ったり、精神的な方でコミュニティに馴染むことへの悩みが大きいのかなと思いました。父母はインドでのバックグラウンドがすでにあるので、カナダに合わせようとしたり変えようとするというよりも、自分の文化を大切にしたい、息子にも伝えたいと思っている。一方、息子はインドでは育ってないので、インドに対する愛着みたいな、自分のアイデンティティであるという感覚が親よりも薄く、むしろ皆と馴染む時の弊害と感じた時も多かったのだろうなと思います。後半のシーンで弁当箱を開けるのが怖かったというシーンなどでそれを強く感じました。自分のルーツに対する捉え方、扱い方に、一世と二世で差が生まれることがあり、そこで壁ができてしまうこともあるんだろうなと。息子の名前はタミル語では"Kavin"なのですが、皆には英語風の"Kevin"と呼ばせていたり、母のキッチンにはスパイスがたくさんあるのに、息子のキッチンには全然ないんですよね。

息子が最後に、都合のいい時だけタミル人として振る舞う自分が嫌だった...みたいに母に話すシーンがありますが、自分は果たして親の国の人なのか住んでいる国の人なのかどちらになりたいのか、どちらなのか、どちらになろうとしても、元々ずっとそこで生まれ育ってきた人とは違うのでどちらにもなれない、というアイデンティティに関する悩みも二世はすごく抱えそうだなぁと思いました。物語の最後で、息子が里帰りしてドーサを教えてもらって作るシーンで、息子はようやくインドを自分のルーツであり大切にしたいものだと感じることができたのかなぁと感じました。

あと個人的に、最後に母に身を預けるシーンが、ものすごくインドみを感じました。日本ではいくら仲直りしたって大の大人が母の膝に頭を寝かせはしませんよね。そういう家もあるかもしれませんけど普通の描写としては出てこないとおもいます。確か他のインド映画でもそんなシーンがあった気がするので、インドでは幾つになっても母は母、という考え方みたいなのが強いのかななんて思いましたね。

服も、食べ方も違う
・言葉の壁

話す言葉と書く言葉の二つがありますが、まずは話す方から。作中では白色の文字がタミル語で、黄色い文字が英語であるというふうに表現されています。父母は英語は理解できるものの息子ほどではなく、息子が英語で話しているとパパにわかる言葉で話して、と言われるシーンがあります。また、父は英語の電話に苦労しているシーンもありますし、母も息子に代わりに英語で職場に関係する人に電話してもらっているシーンがあります。移民二世は、家で話す言葉と外で話す言葉が違うのが大変そうだなあ。タミル語を忘れ始めているって小さいころパパが息子に言うし、移民二世の人たちは、両親の言語の方は家で話す会話はできるけど、もっといろんなシーンで話すのは外の言語なので、どちらかというと外で話す言葉(この場合英語)の方が堪能になる傾向にあるのかな。

一方で、読み書きの方は、二世の息子はそこまでがっつり読めるわけではないようで、物語の後半に母のレシピを読むシーンでは、タミル語で書かれたレシピを英語に訳すときに誤訳してしまっていたりします。タミル語は、「家族と話す」ときにしか使わないから、家族と離れて暮らすようになった後半シーンではなおさら読み書きも忘れてしまっているんでしょうね。ここ、ゲームをプレイしているプレイヤー視点では、ママパートではレシピが英語で書かれておりプレイヤーも読めるのですが、後半では実はそれはタミル語で書いてあって、読めてたのはママ視点だったからで、息子視点になるとタミル語になり読めなくなる、というふうに表現されていたのが面白いし、ゲーム体験として息子の気持ちにシンクロできてよかったなと思いました。

ママ視点だと読めていたものが

息子視点だと読めなくてびっくり
・料理には歴史と思い出と愛が詰まっている

ストーリーでは、Venbaは自分の母から受け継いだ南インド料理のレシピを見ながら料理していくことになります。レシピには、家それぞれ、人それぞれのおいしく仕上げるテクニックが書かれていて、そしてそれは食べてもらう人を笑顔にしたい、幸せにしたいという思いから来ていると思うんですよね。

また、そもそもその「料理」自体も本当に人々が積み重ねてきた、受け継いできた知恵のおかげでできてると思うんですよ。例えばputtuは、ココナッツをはじめに入れないとファ…って崩れちゃう。ビリヤニも、非常にたくさんの種類の材料が絶妙な配分で混ざり、さらに入れる順番でおいしさが底上げされていく。こうやっていろんな食材が組み合わさり、それが「料理」として成立しているのは、先人たちの並々ならぬ研究や努力のおかげですよね。

加えて、後半のシーンで、おそらく映像作品かな?を息子は会社で制作していて、その中にPriyaというtamilの登場人物がおり、そこでの学校の食事シーンに出す料理として、同僚にchicken Tikkaとか?Spicy Vindalooとかかな?って言われるのですが、息子はPriyaはtamilなのでそのどれでもないと思う…というシーンがあります。調べたら、Chicken Tikkaは北インド料理であり、Vindalooは西のゴア州の料理でした。どうしても"インド料理"でくくってしまいがちですが、地域によって全然違うんですよね。文化は、正しく知って伝えていかないと、誤解されたり混同されたり、失われてしまうんですよね。

en.wikipedia.org

en.wikipedia.orgなので、「母のレシピ」には、母の愛と、これまでの先人たちの努力、受け継がれてきた文化が詰まっているんだと思います。それがVenbaの母からVenbaへ、そしてKevinへ受け継がれていく。ただ、Kevinはもらった当初は全然使っていなかったようでした。しかし同僚との会話がきっかけで、レシピを開くと、昔の思い出がよみがえります。そして昔ひどい風を引いていた時に母が作ってくれたスープを、レシピを見て作ってみます。そしてKevinはその味から、思い出を思い出し、実家でドーサの作り方を母に学びます。ここでKevinはようやく"タミルの食事"を受け継げたんじゃないかなと思いました。

食は、生きる上で不可欠のものです。体調が悪くても、悲しいことがあっても、嬉しい時も、どんなときでも、人は、誰かが作ってくれたご飯を食べて生きていきます。料理には、愛と、そして思い出も詰まっているんだなあと思いました。誰かが料理を作ってくれる時、感謝の気持ちを忘れないようにしたいなと思います。(Kevinが帰省をすっぽかすシーンには心が痛みました…)

料理を作るとき、食べるとき、だれかがいる
・音楽

お母さんが料理を作る時にラジオでかける南インドのポップスがとてもノリノリで最高でした。

alphasomething.bandcamp.comVenbaはタミル語なので異なりますが、雰囲気としては同じ南インドであるテルグ語映画のラージャマウリ監督の作品のバーフバリやRRRで流れるような感じで楽しかったな。↓これはテルグ語NTR.jrさんの曲ですが、インドの言葉のなんというか巻き舌というか流れるような音って、音楽とマッチしてとてもくせになるんですよね~。

m.youtube.com

・料理

料理するシーンは、グラフィックは絵本のように可愛らしいものながらも、蓋を開けた時の蒸気や、油が跳ねる音などの表現が良く、ふわあ〜美味しそう!!ってなりました。南インド料理については、家に北インド南インドのカレーとおかずのレシピがあり、何個か作ったことがあったので知ってるの結構あるやろ!と思ってプレイしたら初っ端から全く知らない料理が出てきて、テンションあがりましたね。料理もさることながら、調理器具も知らないものが多く、イドゥリメーカーやプットゥメーカーは専用の蒸し器があるんだ!とびっくりしっぱなしでした。国それぞれにその料理に特化した調理機器があるんですよね~。電鍋とか。炊飯器とかも海外から見たらそのポジションなんだろうなあ。

専用蒸し器があるの、あたりまえなんだけど面白い

ココナッツ削り台が家にあるのがすごい

一方で使われる食材は、ココナッツファインやいろんなスパイス、タマリンドなどこれまで私が趣味で作ってきたものに使われているものが多かったので、知ってる知ってる〜!とニコニコしながらプレイしてました。調理の方法も、南インドはスパイスを熱してあとからかけるテンパリングをよくするのですがそれが実際に出てきたり、ホールスパイスを入れるタイミングやトマトは水分が出るから後から入れるとかも実際にそうなので、本当に料理を作ってる気持ちになって楽しかったです。プレイ終わって、その日に本屋に行って南インド料理の本を買ってしまった(ちょろい)。

会話の中にしかでてこない料理などもあるのですが、あたりまえですがそういうのがすらすら出てくるのが、ああ、違う文化の人たちの生活を体感できるストーリーだなあ、と楽しかったです。個人的に今後食べて見たいので、メモ!

・idli

朝食の定番だそうです。食べ方について考えると、サンバルやチャツネと一緒とか、チリパウダーとごま油とか、いろいろあるんだということをしれます。Venbaのお気に入りはチキングレイビーの残りと一緒に食べるやつだそうです。うまそう~~

おかおが可愛い

・chutney(cp1の会話で出てくる)

チャツネは有名ですよね。

・parotta(cp2の会話で出てくる)

サクサクで美味しそう〜

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・dosa(Kari dosa、ghee dosa)(cp.2の会話で出てくる。ch7でもでてくるので後述)

・Idiyappam(cp.2の会話で出てくる)

en.wikipedia.org

・puttu

間には何を挟んでもいいらしく、Venbaはお肉を挟んだeraichi puttuが好きだそうです。手巻き寿司みたいなノリなのかな〜?

トレーはバナナの葉っぱ柄かな?

・Biriyani

色んなスタイルがあり、Venbaの母はハイデラバードビリヤニが好きだったそうです。あと、作るためのスパイスをカナダで調達するのが本当に大変だったって回想してて、移民はそういうところもでてくるよな〜と共感しました。

ふわあ~~

・podi(cp4 でママが一人暮らしにもってきなさい!っていうやつ。ふりかけを息子に持たせるのはうちの祖母もやってたな笑)

豆のスパイシーふりかけ。idilなどにつけて食べるやつだそうです。

www.indianhealthyrecipes.com

・kuska(cp4でパパのセリフで出てきた。ビリヤニのことっぽいけど、お米が違うのかな?)

www.indianhealthyrecipes.com

・cp5のママが作るごちそうは、メモ帳の文字(タミル語)と料理しか情報がない(英語の情報がない)ので推測。googleカメラ翻訳で大体わかりました。すごいな~

綺麗~!

読めねえーーー!!!

・ムルック முறுக்கு

くるくるしててかわいい

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・  パニヤラム குழிப்பணியாரம்

タコ焼き機やんけ!!って笑っちゃった。

完全にタコ焼き機

どんな味なんだろ

en.wikipedia.org

実際にタコ焼きを作っている方がいた笑↓

wakka-kitchen.com

・フィッシュフライ மீன் வறுவல்

魚にマサラを塗り込んでたっぷりの油でこんがり!

絶対美味い

www.youtube.com

・ラッサム ரசம்

作り方がテンパリングだー!!ってテンション上がった。

器が可愛い

ja.wikipedia.org

・チキングレイビー கறி குழம்பு

ご飯が欲しい…(日本人)

www.youtube.com

・チキンフライ சோழி வறுவல்

骨付きなところがイイ

www.youtube.com

 ・Nattu Kozhi Kulambu

チキンストックから作るの贅沢

www.yummytummyaarthi.com

・Mulligatawny

cp6でスープについて考えると、昔父親が「Mulligatawnyは自分たちのスープのパチモンだ」って言ってたな~と息子が回想します。Mulligatawnyは、英領インドの時代に、インド人のシェフがラッサムに基づいて、イギリスである食材でできるように創作したスープだそうです。スパイスもカレー粉がつかわれ、タマリンドではなくレモンが使われていたりと、努力がうかがえますが、地元のやつの方がおいしいっていうパパの気持ちもわかる笑でもそれこそ、イギリスに移民となったインド人が作った料理なので、せっかくの努力を移民の君が汲んでやってもいいのでは!という気もする。笑

jp.ndish.com

・dosa

作り方にコツがいりそう。idilとバッターはどうも同じようです。使い道無限大!

ドーサパーティとか楽しそうじゃない?

・oothappam

Dosa+野菜いろいろ!南インドお好み焼き。エビとかも入れたら絶対美味しいと思う

色んなもの入れたくなる~

en.wikipedia.org

www.youtube.com

Kari dosa

Dosa+卵+お肉(マトンかな?)。お父さんが好きだったみたいで、cp2でもセリフにちょこっと出てきます。

卵も入れるところがいいね!

ゲームプレイ後、タミル料理のwiki見るのが楽しい!

ja.wikipedia.org

 

まとめ

映画くらいのサイズ感で、知らない文化、悩みを知るきっかけをくれ、また最高に美味しい南インド料理を教えてくれるとても良いゲームでした。また、初めて知る料理について、作る工程やそこに付随する物語のおかげで、レシピを見るだけでは感じられない親近感や興味を抱くことができ、素晴らしいきっかけとなってくれました。製作者の方々に感謝!ちなみに、製作者の方は作中の息子の立場、移民二世の方だそう。

 

おまけ

思い立ったが吉日ということで、クリア翌日に南インド料理屋さんの虎ノ門のナンディニさんに行ってきました!

www.nandhini.jpイドゥリ、

サンバルとチャツネつき!

ラッサム、

すっぱうまい!

ギードーサ、

BIG!!!!!!

ビリヤニをいただきました。

マトン!ゲームと同じで、白いお米を上にぱらぱらするんだね

どれも美味しく頂きましたが、とくに感激したのはドーサでした!めっっっっっちゃ美味かった!!正直、餃子の皮のパリパリとかお好み焼き的な感じかな?と思って食べたら、もう全然違くて、まずギーの香ばしさがすごく、パリパリながらもところどころもちもちというか食べ応えもあり、生地だけで無限に食べれる美味しさでした。インド料理としてメジャーになってないのがものすごくもったいないと思います。とってもおすすめ!!!

あとチャイとプレーンラッシーも飲んだのですが、ラッシーが激うまだったのでこちらもおすすめです。

ラッシーはどろどろ濃厚系でした!